>>77
昔からスポンサーだの後援会だののおじさんたちの相手はしてきた
だってみんなの支援がないと続けられないから
それでも頑張ってきたのはスケートが好きだから
ヴィクトルに堂々と胸を張って並びたいから
どんなに汚れたって氷上では純粋な気持ちで居られる
僕の唯一汚れてない部分だ

「ごめんね……勇利…ごめんね…」
お母さんはそう言って何度も謝りお父さんは「すまん」と土下座をした
真利姉ちゃんだけは「あんたは何も心配しなくていいよ」と肩を叩いたがその手は震えていた
僕は自分のことに夢中で家がどうなって居たか全然わからなかったんだ
差し押さえられた温泉施設、怖い男の人に連れて行かれた姉ちゃん
両親は泣いて最後まで抗議していたが殴られて二人も別のところに連れて行かれた
眼光鋭いスーツの男たちを引き連れて人の良さそうな年配の男は僕に近づくと上から下まで
値踏みするようにジロジロと見た
「ああこいつか…なんか見たことあるわ。一番稼げそうやな」
「あの…家族は……どうなるんですか………お金なら僕が何とかしますから」
「にいちゃんが全部背負うって?健気だねえ」
「ま、そうやな…にいちゃん次第でそれでいけるかもな…おい、枠空いてるか?いけるんじゃないか?」
「はい、いけそうですね…確認とってみます」
それから慌ただしかった。売春でもさせられるのかと覚悟をしてはいたが拍子抜けするほど丁寧に扱われた
裸にされて色々触られたけど楽しむためというよりはチェックをしているようだった
目隠しをされて何時間も連れまわされた後引きずられように出されたのは舞台のような場所だった
僕のようにポカンとした若い人たちが何人か…国籍はいろいろだが東洋人は僕だけみたいだ
『お待たせしました!ご存知の方もいるでしょう!日本が誇るフィギュアスケーター勝生勇利!』
どよめきとともにスポットが当たる。どういうことだろう?踊れっていうのか?
『カルテでは持病も故障もありません。極めて健康…それから性交渉の経験もなし!
さあ、この東洋の真珠にいくらの値がつくのか』
え?どういうことだ?僕に値段をつける?
『100万!』
『1億』
『こ…これはいきなりの高値です。いかがしますか?』
『い…1億100万!』
『3億』