アンカ萩松(2/2)



「そんでなんで松田は降谷だってわかったの?」
あの後2軒目へと繰り出し、すっかり出来上がった3人は終電ぎりぎりで別れた。
松田と萩原は方面が同じのため、連れだって歩く。
「あー?何のことだ」
「さっきの話。デモに降谷っぽいのがいたけどなんかあったから確信したんだろ」
「ああ……」
アルコールの赤い顔の松田が、少し考えるそぶりを見せ、さらにカッと顔を赤らめその場にしゃがみこんだ。
おやと萩原が顔を覗くと、口を押えて「あー」だの「うー」だの唸っている。
これはおもしろいことが聞けそうだとにやりと笑うと、松田を立たせて親指で近くの建物を指さした。
「じんぺーちゃん具合悪そうだし、ちょっとそこ寄ってこっか?」
萩原が示した先は、ご休憩、ご宿泊の文字がリーズナブルな代金を示すラブホテルだった。

部屋に入ると早速松田をベッドに押し付ける。
「ちょっと待てって萩原!」
松田の抵抗もむなしくするすると服をぬがされていく。
ネクタイを外し襟元をくつろげると先日の情交で付けた紅い痕が萩原の目に止まった。
にんまり笑い、そこを上書きするように強く口づける。
「ん……ぅ……」
改めて松田の肌に鮮やかに咲いた紅を嬉しそうに萩原がつつく。
そんな萩原にジト目を送ると松田はため息をついた。
「これのせいだっての、ったく……」
「うん?何がよ」
「降谷が……」
はて、降谷。突然の名前だったがそういえばここに連れ込んだのは降谷を口実にしてたなと思い出す萩原。
そこまで追求する気はなかったが、恥ずかしがる松田が股間に来たのでというのが正直なところだ。
そんな心中はおくびにも出さず、松田の話を聞いてやる姿勢を取る。
いい彼氏とは聞き上手なのだ。
「デモ隊の中に降谷っぽいのがいたんだが、俺も最初は本人だなんて思わなかった。
でも目が合って、じっとこっち見たと思ったらにっこり笑って自分の首筋トントンって指で叩いて。
その時は何かわからなかったけど戻って着替えの時に見たらこの痕だろ。
口パクで「ラブラブ」だの「萩原」だの言ってる気がしたのも間違いじゃなかった」
語り終えると枕に突っ伏しうーうー唸っている。
可愛いのでこの後美味しくいただくのは確定として、萩原はこの状況を与えてくれた降谷に感謝する。
(降谷のおかげで松田と親友以上になれたんだもんなぁ)
所在不明の友人に心の中で手を合わせ、リアルでも手を合わせて礼儀正しく宣言する。
「可愛い松田を据え膳してくれた降谷に感謝して、いただきます!」

翌日鏡を見た松田があまりの痕の多さに萩原に殴り掛かったとかなんとか。
そして伊達の元には『オレゲンキ』の5文字だけの怪メールが届いたとかなんとか