SSパロディカプなし
賞金首の町7

男が叫ぶ勢いでモトラドに乗り上げようとするので、キノは慌てて押し退けます。
 「どうしたんですか。やめてください」
 「罠だったんだ!クソッぜんぶクソッたれたやつらの罠だったんだ!バーボンの野郎裏切りやがった!」
 「………?」
 「なにが賞金首だ!話が違うんだよ最初から!なぁ乗せてくれ!俺はもうダメだ、正体がバレちまった」
 「離してください。あなたを乗せるわけにはいきません」
 「いいから乗せろ!ここにいちゃあぶねぇんだよ、二人のりくらいできるだろうが!」
 「警告はしましたよ」
 男は武器らしい物はなにも持っていません。キノは腰のホルスターに手をやります。男が諦める様子はなく、このままではきっと襲ってくるでしょう。
 「汚さないでよね」
 エルメスの声だけがのんびりしていました。

 キノは男のうでをハンドルから引き剥がし、横腹を蹴りあげました。
男が苦しそうにうめきます。モトラドを後退させるも、男は道の先に立ちはだかったままです。
 「警告は、しましたよ」

 キノはパースエイダーを握りました。
キノが銃口を向ける前です。空気を切る鋭い音符がわずかに聞こえました。
銃を撃ったことのある者だけが銃声だと気づくことのできる小さな音です。

 男の眉間に黒点がつきました。
すぐに点はひろがり、赤黒くなっていきます。血が静かに流れ落ちてゆき、男が前に一歩だけ進んで倒れました。

 「撃ったの?」
 「いいや」
 キノはパースエイダーをホルスターにしまい、モトラドに足をかけました。それから体をひねり、先ほどまでいた町を振り向きます。
 その町からこの道路まで一本道です。木々は所々に植えられているものの、景観はよく身を隠すほどの遮蔽物はあまりありません。
 キノとエルメスは町を離れるまで一言も口を聞かないつもりでした。
あの町でどのような話題が命取りになるのかわからなかったためです。
 キノは町から丘へと入りかけた道を眺めました。きっと撃たれた男は、ここまで逃げ伸びたらことで気が緩んでいたのでしょう。町からこの場所まで、かなりの距離がありました。

 「……あんな場所から当たるんだ」
 「どうするの?キノ」
 「……いこうエルメス」
 「そうしよう。そういえばさっきの話の続きだけどーーー」
 「それはだめ」
 「えっなんで?」
 「………もう少し遠くへ行ってから話そう」

 キノはそう言うと、走り出してアクセルを強く握りました。スピードが急にあがり、エルメスが文句を言います。
 「出しすぎ!」
 「すぐ緩めるよ。ここを離れたら」

 言葉の通り、道路からキノの背中はどんどんと小さくなり、やがて見えなくなりました。
 あたりは男の死体が転がった道があるだけです。人が通りかかるまで、この死体はそのままでしょう。もしくは誰かに片付けられるかもしれません。
 風が吹いて、木々の葉が揺れます。
太陽の柔らかい日差しも揺れて、白い光を反射しました。それはどうやら遠くの、スコープの光のようでした。





思ってたより長くなったしまいまして申し訳ない
キノ旅アニメでハッスルしたからみんなアニメみてね!