チャイナ沖安めっちゃ萌えたので触発されて中国沖安SS書いた!
三姉妹やなくてすまん!



『沖矢昴』の仮面を被ってからFBIの仕事は極力断っていた
当然だ、せっかく赤井秀一が死んだという状況を作り出したのにここで沖矢とFBIに繋がりがあることが知れたらまた面倒なことになる
特に、面倒事、で頭に浮かんだ人物だとか。
しかしその彼はここ数週間姿を見せていなかった
見慣れるほどになった彼の愛車が家の前に停まってこともなく、喫茶店を偶然(そうあくまで偶然に)通りかかって中を覗いてもいつもの笑顔はなかった
だから、というわけではないが刺激の少ない日常に少し膿んでいたのもあってその仕事を引き受けた
隣家の少女のガードはいつものようにキャメルに交代した

任務の内容はこうだった
最近中国のある地域で各国の男性観光客をが行方不明になる事件が連続している
その中には米人も少なくない数が含まれていた
地元警察が捜査を行っているが、どうも一帯を仕切るチャイニーズマフィアが裏で手を引いているらしく捜査に力を入れる様子がない
業を煮やした在中米国大使館からFBIに極秘捜査の依頼が舞い込んだというわけだ
なるほど、確かに死んでいて現在FBIに所属していないはずの捜査官で、かつ日本国籍の一般人の身分持ちを使うのにうってつけだと沖矢は鼻で笑う
作戦は単純
善良な日本人観光客の東都大学院生(童貞)沖矢昴は気軽な海外旅行に来て怪しげな奴らに捕まり、何とか逃げ出して偶然そこにいた米国大使館職員に見てきたことを訴える、というわけだ
そこで米人の姿でも写真に収めていれば強制介入のいい理由になる
せいぜいチョロ井鴨を演じてやるさと、いかにも観光客といった様子で、観光地を回り首から下げたカメラで特に興味もない石だの家だのを撮りまくり、観光雑誌の地図とにらめっこして1日目は終わった
なるべくセキュリティが低いところをという観点で選んだホテルのスプリングのきしむベッドでたばこをふかしながら今後のことを考える

観光客たちが姿を消したタイミングやシチュエーションはわかっていない
多くの人間は、『次に宿泊予定のホテルに来なかった』『予約したレストランに来なかった』など、次の予定が実行されなかったことでいなくなったことが初めて判明している
つまり、誰かに連れ去られる姿や諍いがあったなどを目撃した人間が誰もいないのだ
泊まったホテルは普通にチェックアウトし、次はどこそこに行く予定だと朝食をとった店の給仕に話し、そして煙のように消える
「神隠しとでもいうんですかねえ」
あまりに自然に消えるため、最初の2〜3件は自らの意思による失踪と思われていたほどだ
だが、失踪したのが第3世界の人間ならわかるが、いなくなるのはアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、そして日本など、はっきり言って中国に不法滞在したがるメリットがない国々の人間
それがここ半年で27件
「この国の警察はさぞかしいい食事をとっているんでしょうね。黒いお友達のおごりで」
沖矢のままつぶやくとタバコの火を消し寝る態勢をとる
これまでのケースだとホテルで危害を加えられることはないということを知ったのはココに来て大使館の駐在のFBIからブリーフィングを受けた時だ
それならもっとまともなホテルを用意しろと変な力の加わるベッドに不満を覚えながら沖矢昴は眼を閉じた

人の気配に意識が浮上する
沖矢は枕の下に入れた銃の感触を確かめながら、少しずつ近づく気配を探った
足音一つ、衣擦れさえ極力抑えたプロの身のこなし
殺気を感じないのはそのように訓練されたか、はたまた暗殺が目的ではないのか
沖矢として培った薄目の技術で侵入者の足元を捕える
中国風の繊細な刺繍の入った布靴、そこから延びる足首は細くどこか艶めかしい、その肌の色はこの辺りでは珍しい褐色で――
「――っ!」
その肌の見た瞬間腕を伸ばし侵入者をベッドに引き込んだ
両手を両手でそれぞれ押さえつけ足を挟み込み動きを封じる
見下ろした顔は2週間ぶりのベイビーフェイス
「夜這いとは熱烈ですね安室さん」
「……ただの大学院生とは思えない身のこなしですね沖矢さん」
伝統的な物よりももっと身体にぴったりと沿うようデザインされた長袍を身にまとった安室透がそこにいた