SS ライバボ 2/2
ふっわ〜とした雰囲気だけの話でバーボンがモブおじにハ二トラしてる風



「いい男だろ?」
バーボンの視線の先を気にして、ターゲットが耳元で囁いた。嫉妬を含んだ声だ。
「アコーディオンの腕もいいんで10日ぐらい前にバンドのメンバーに雇ったんだ。色男のお陰で女の客が増えたよ。今日はソロで好きな曲をやらせてる」
「好みじゃないですね。なんだか怖そう…」
「確かに何を考えてるのか分からん奴だよ」
バーボンは陽気に笑う隣の男を哀れんだ。欲を出さずに組織の運び屋だけをやっていれば、もう少々は長生きできただろうに。
テキーラをあおった男に腰に手を回されて、バーボンは少し困った顔をしてみせた。
「上の階に俺の部屋がある。もっといい酒もあるから飲み直そう」
上目遣いで迷っている風をみせていると演奏が終わり、店は拍手と口笛で沸いた。
ライの内偵によれば、部屋には男が組織の薬品を横流ししている顧客のデータがあるらしい。
店の入り口近くのテーブルでつまらなさそうにビールを飲んでる男二人、あれはボディガードだ。連絡が入ればもっと増えるだろう。
だが、大した仕事じゃない。
しなだれかかったバーボンの髪に男はキスをした。
ライとは違う煙草の匂いがした。
拍手がまばらになりやがて止むと、次の曲が始まった。
ドラマティックな冒頭とエレガントなメロディ。
これも名曲だ。
男は顔を寄せてバーボンを口説き、バーボンはクスクス笑いながらも相手を熱く見つめる。役割は完璧にこなしているが、バーボンの心はそこに無い。
バーボンに夢中のターゲットは気づいていないが、今ステージの上のライがこちらを見ている。
それだけでゾクゾクした。昨夜、何度も止めろと言ったのに体中につけられた赤い跡が疼く。
その事に何の意味があるのか、そもそも意味があるのかも分からない。ただ、ぎらりとした目でライはバーボンとターゲットを見ている。
曲の名前は「ジェラシー」だ。
「この曲好きなんです。だから…終わったらお部屋に行きましょう」
バーボンが囁いた。
仕事は直ぐに終わるだろう。