パリ零(警察学校時代)出会い(3/4)

「……」
それは時間に直すとほんの数秒の出来事だったが、赤井は自分がその少年に見惚れていたことを自覚した。
柔らかそうな金の髪は向こうでよく見る染髪のそれとは明らかに違い間違いなく天然のものだった。
しかし肌は対照的に健康的な褐色で、こちらにも焼いた気配はない。瑞々しく、色の濃さにも関わらず透明感すら感じられる。
男はあまり着ないような真っ白いコートがよく映えていた。
そして、何よりその顔の愛らしいことと言ったらなかったーーとにかく顔が可愛いとしか言いようがない。
自分とそう変わらない集団だと踏んでいたが、この少年はもしかしたらまだ16、7かもしれない。
ただでさえ水分の多そうな大きな瞳が寒さのせいか潤んでいて、余計に幼く見えた。
賢そうな小さな鼻といい少し生意気そうな唇といい、パーツの形と配置は完璧だが、美術品のように鑑賞するのでは満足出来ない。
是が非でもこちらを向かせて、ありとあらゆる方法と角度で構い倒したくなるような可愛さだった。
昔から女には不自由したことがなく、幼少期からサンタに夢見るよりも敬愛する父を超えることを目標にしてきたようなハードボイルド一直線の赤井だったが、
彼はこの日初めて好きな子に意地悪したくなる小学生男子の気持ちというものを理解した。
感極まって殺人現場でangelなどと無駄に良い発音で呟く黒づくめの大男に周囲の人間はビビりまくっていたが、当然あえて触れてくるような猛者はいない
(近くにいた警官でさえ明らかに怪しい彼を必死に見ていないふりをしていた)。
それをいいことにさらに少年にだけ意識を集中させていると、幸運なことに彼の声が聴こえてきた。思ったよりも低く、落ち着いた声だ。