荒れてないけどSS書いた!赤安!


明日は前線への出征である
準備を整え就寝を待つばかりの赤井は、それでも戦前独特の高揚を抑えるようバルコニー前の窓を開ける葉巻を咥えマッチで火をつける
深く肺に入れふーっと宵闇に向けて煙を吐いた
重いタールが体を蝕むこの感覚がたまらない
もう一度吹かし同じように吐き出された煙の向こう、夜の帳を縫うように闇に淡く光る人影を見つけた
「……君は隠密には向かんな元帥どの」
その言葉を受け苦々しい表情を浮かべるのは赤井の唯一剣を捧げた男、降谷零だった
1月の夜更けは冴えざえと冷える
薄着の降谷を慮り赤井は部屋の中に招き入れ暖炉前のカウチへと促した
しかし降谷は勧められたそこへは座らずペタりと暖炉前の床へと尻をつけると赤井を見つめた
座り込んだ降谷が立つ赤井を見上げれば自然に上目遣いとなる
赤井はその自然と潤む幼い印象すら与える大きな瞳から目を逸らせずにいる
二人の間に落ちた無言は一瞬だったか数分だったか
とうとう降谷は口を開いた
「……赤井、行くんだな」
その言葉に思わずといった風情で赤井は笑った
「命令を下したのは他ならぬ元帥どのさ」
「ああ……」
「北方戦線が今大戦の要石だ。ここを落とせば我々は必ず勝利を手にする」
「だがあそこは厳しい」
「ああそうだな。だからこそ元帥どのは俺を送る。君が信じられる君の一番の武器は俺だ。そうだな?」
「わかっている!お前以外にあそこを任せられる人間はいない……」
「はは、深刻だな我が軍の人材不足は」
「お前がいなければこんな作戦を決行しようなどとは言わなかった」
「そうだな、そして我が国は歴史的大敗だ」
「だがお前がいた」
「そうだ俺がいる限り君に敗北の汚名が被せられることはない」
そこまで言うと赤井はすっと膝をつき降谷に手を取り指先に口付けた
「勝利の栄光を君に」
その言葉にとうとう堪らず降谷は一筋の涙をこぼした
「僕も……っ!」
続けようとした言葉は、しかし、赤井の唇に飲み込まれた
「ん……ぅん……」
絡み合う舌から発する粘着質な水音と暖炉の薪の燃える音が空間を支配する
二人の唇が離れるとつーっと引いた糸が炎に照らされて銀色に輝いた
「元帥が前線に出てどうする。君は大本営にいて、ドンと構えていろ。ああ、補給を手厚くしてくれると助かるな」
「ふ、それは戦果次第ですよ。無駄飯食らいに送る米は一粒だってないんです」
弱気になっていた降谷がいつもの調子を取り戻したのを確認し、赤井は心中ホッと息を吐く
あんな可愛らしい姿を見せられては後ろ髪引かれるばかりだ
すくっと立ち上がった降谷を出口までエスコートしようとすると、降谷は不思議そうな顔をした
「赤井、寝室はこちらですよ?」
「は?」
「出征祝いの餞だ。抱かせてやる」
ニヤリと笑うその顔はどこまでも男前でありながら誘う色気を放って
「ーーーー!君はっ!」
「はは、お前が死んでも忘れ形見がいれば生きていけるからな。たっぷり種付けしてくれよ」
「ホォー……いい度胸だ三回は孕ませてやる」
「いいな、三つ子とは豪勢だ」
もちろん男の降谷が孕む訳などない
ただの言葉遊びだ
だが抱き合えば残るものが確かにある
腹に遂情されれば情けが灯る
そういうものが欲しいのだ
縺れ合うように二匹の獣は寝床に転がり焦るようにお互いの軍服(よろい)を脱がせあった
「くそ、なんでこんなにボタンが多いんだ」
「お前が勝って帰ってきたら戦勝記念に軍服を一新してやるよ」
「そうか、それなら片手で剥げる仕組みにしてくれ」
「ばーか」
別れの朝はまだ遠い

この赤井は戦に勝つけど行方不明になって別の場所で記憶喪失の沖矢が軍に拾われて徴兵されるよ!