私生活ではかなり接点が生まれた感のある俺と猗窩座だ。
食につられて懐柔されている気がしなくもないが、思ったよりも猗窩座は性根はいい奴なようで、口が悪く生意気なところがあるが、一緒にいるのは不思議と居心地良かった。
なにしろ驚くほど頻繁に俺に食事を提供してくれるのだ。

仕事で知り合っただけの相手にそんなにも施せるなんて、いい奴に決まっている。
俺も自分からメシの催促の連絡をしてしまうほどには、猗窩座にいつの間にか懐いてしまっていた。男として情けない話だと思うが、矜持では腹は膨れない。


だから何度かに1度は、口車に乗せられて、猗窩座にあらぬ悪戯をしかけられることも、その流れで美味しく頂かれてしまうことも、なんとはなしに許してしまう形になっていた。


だから恥ずかしい話だが、猗窩座と肌を合わせることに慣れてきている今だからこそ、逆にカメラの前で抱き合う事に以前にも増して抵抗があった。

下手に友人関係なんて築くんじゃなかったと後悔したくなる。普段から顔を合わせている相手と抱き合うことなんて、簡単な事じゃない。


友人関係。
本当にそう呼んでいいのかは分からないが。
猗窩座の中で自分がどんな立ち位置にいるのかは、知らないし聞けもしない。
だが俺は、勝手な俺の考えだが、こんな風な友人関係を築くのも悪くないと思い始めていた。


猗窩座は食事を食べさせてくれるだけではなく、あれやこれやと普段から世話を焼いてくれた。基本はマメな男なのだろう。
どちらかと言えば大雑把な俺とすれば、最初はタイプが違い過ぎて鬱陶しいと思っていたが、今に至ればその世話好きなところが居心地良かった。