未明に降ったのね。もう上がってしまったわ。

ちょっとひんやり湿った空気ね。風はないの。
ふと、オランダの古都で過ごしたひと夏を思い出させる感じね。
とっくに陽は出ている時分なのに、空全体が白くて霧をかぶったようなの。
露をたっぷり含んだ肌寒い朝の空気の中、レンガ敷の道を運河沿いに歩いて、
早起きのパン屋さんに焼き立てを買いに行くの。
この時期は、孵ったばかりの雛を連れた水鳥たちが
静かな水面にさざ波を立てながら一列になって泳いで行くのよ。
パンを抱えて帰り道を半分も来る頃には、いつの間にか青空になっていて、
夏の強い朝陽に射られた背中がちょっと汗ばんてくるの。