だからわたしは、まこちゃんと別れるあの時、精一杯の勇気を振り絞ったんだよ。結婚しようって約束したよね。わたしにとっては、あれは精一杯の勇気だった
もしかしたら、まこちゃんともう会うことはないかもしれない。でも、わたしはそうしてもまこちゃんが好きだった……。まこちゃんとの繋がりを消したくなかった……っ。だから、約束をしたんだよ。
あれは、まこちゃんにとって、ささいな約束だったのかもしれないけど……。わたしにとっては、とても大切な約束だったの……っ
たとえ離れてもまこちゃんとの関係を、唯一、繋げてくれる約束だったから……っ。まこちゃんがあの約束を受け入れてくれた時、わたしは本当に嬉しかった。だから笑顔で別れられたんだよ……っ
でも……。本当に長かった……。まこちゃんとの再会までの時間は、わたしにとっては本当に長かった……。わたしは、一生懸命にハーモニカを吹き続けた。いつか、この音色がまこちゃんの耳に届くんじゃないか、って……
でも、年を経るにつれて、こんなことをしても、意味がないんじゃないかって思えてきた……。だって、こんな小さなハーモニカの音色なんて、こんな大勢の人がいる世界で、まこちゃんの耳にだけ届くなんてありえないもの……っ
それでも、わたしはこのハーモニカにすがるしかなかった……。あの約束にすがるしかなかった。わたしにとっての、まこちゃんとの接点。それは、このハーモニカと、あの約束しかなかったから……っ
そして、四度目の引越しのとき……、この街に引っ越してきた時……。わたしの願いが、ようやく届いた……
夕暮れの屋上で……。まこちゃんが立っていた……。まこちゃんは最初、わたしのことがわからなかったみたいだけど……
わたしには、すぐにわかった。心臓が張り裂けそうだった。心が……飛び出しそうだった。
そして、これが最後のチャンスなんだって思った。神様がくれた、最後のチャンスなんだって。わたしの気持ちをまこちゃんに伝える、神様からの最後のチャンスなんだ、って……っ
だけど、まこちゃんは、昔と一緒で、わたしの想いには全く気付いてくれなかった。だからわたしは、まこちゃんに行動で知らせようと思った。わたしの想いを……
でもまこちゃんにとって、わたしはいつまでも、昔の幼なじみのままだった。わたしにとっては、精一杯の勇気だったのに……。まこちゃんはわたしのそんな心に、気付いてくれなかった……っ
だから、わたしは怖くなったの……。もしかしたら、わたしのことを、まこちゃんはなんとも思ってないんじゃないか……。だから、最後の賭けだった……っ
浜辺でのキス……。でもまこちゃんはやっぱり、何もわたしに、示してくれなかった……
わたし、本当に怖くなって……。まこちゃんの気持ちが、わからなくなって。だからこのまま、幼なじみの関係でいいと思った……
でも、お父さんが死んじゃって……