万次郎の恩返しが問うもの 中濱京さん
なかはまきょう ジョン万次郎直系5代目 1963年生まれ。富士通に勤務しつつ、日米の草の根交流を続けている。
著書に「ジョン万次郎 日米両国友好の原点」がある。
2018年4月24日
177年前に始まった万次郎の冒険にまつわる、さまざまなものが我が家に伝わっています。
通訳として咸臨丸に乗って渡米した際、サンフランシスコで福沢諭吉と一緒に購入したというこのウェブスター辞書、漂流から10年間の絵入りの見聞録、フランクリン・ルーズベルト米大統領から曽祖父への手紙など。
でも、それ以上に大事な宝物は、鎖国の時代に万次郎を救った人々との家族ぐるみの交流が、現在も続いていることです。
 9歳で父親を亡くし、母親と兄弟を支えるために漁師になって働いていた万次郎は、14歳の時、嵐に遭って伊豆諸島の無人島に流れ着きます。
万次郎は生前、「決してあきらめてはいけない」ということを繰り返し言っていたそうですが、釣りの道具や火打ち石もないなか、143日も生き延びた経験に裏打ちされていたのだと思います。