ttp://imepic.jp/20141224/483920
「まさか、ここでMさんに会うとは思わなかった。」
S君は愉快そうなそぶりを隠しもせず、明らかに含みのあるニュアンスを含ませた口ぶりで隣のスツールに腰かけた。
S君に誘導されるがままカウンターの隅に腰を落ちつけたけれど、気まずさと不安でいっぱいの私は言い訳がましく一人で店に来た理由を話しだす。
「……だから落ち込んでいたので真っすぐ帰りたくなくて、ふと目に付いたこの店に入ったの。明日は土曜日だからはじめての店に入ってみるのもいいかなって思って……。」
「――ふうん」

我ながら白々しい言い訳だけれど咄嗟に何も思いつかなくて自嘲気味に手元のグラスに視線を落とす。すると意味ありげに含み笑いをこぼしていたS君の顔がふいに近付いてきて、突然私の耳たぶを(きゅっ)と食んだ。
「ひっ……」
「俺なら思いっきり泣かせてあげられるのに。そうしたくてこの店に来たんだろう?何もかも忘れて子供のように泣きわめけばいい。」
そう言って何でも無い事のように彼から耳打ちされた内容は驚くべき提案だった。
彼の真意を探ろうとじっと見つめると、(私の内心を全て見透かしている)と言わんばかりに余裕の表情を浮かべ微笑んでいる。

「君が未知の世界を体験したいなら、今トイレに行って下着とストッキングを脱いでコレをつけておいで。勇気が無くてこのまま帰るとしても、今日の事は誰にも口外しないと約束するよ。」