>>11
 呼吸が整わない俺の声は力弱かったのに、あにぃは俺に気付いてくれた。あにぃはこちらを向いて俺を指さすと、俺の真似をして口をぱくぱくさせて笑った。
綺麗な歯、あにぃの笑顔はほんとうに優しい。あにぃが元気で帰ってきて良かった、ほんとに良かった。俺は思わず泣き出してしまう。
 あにぃは人混みをかきわけ、俺のところに来てしゃがんだ。あにぃの体からは、ほんの少しだけ血の臭いがする。あにぃは指で俺の頬の涙をぬぐい、俺の頭を撫でながら耳打ちする。
「一番星が頭の上に昇ったら小屋に行く」
俺は、ほかの奴らにわからないよう、あにぃだけにわかるよう、小さく頷く。
 俺は嬉しくて嬉しくてもう卒倒してしまいそうだ。あにぃはすぐに皆の輪の中心に戻って行く。立ち去っていくあにぃの肩と背中がかっこいい。あにぃは出かける前よりかっこ良くなってるんじゃ無いか?そう思ったら、また涙が出た。