「ケーレスさん……もうダメだ。肥料を探したけど全部使い切って無くなってる。肥料が無い以上農作物が収穫できない」

一人の老人が私たちの元へと駆け寄ってそう告げる。その言葉にケーレスは溜め息を吐いた。

「やっぱり全滅かぁ……こうなったら肥料の代わりになるものを探すべきだね」
「ふむ、肥料の代わり……か」

肥料の代わりは意外と多かったりする。例えば動物の骨、それも粉々に砕いて土に撒けば肥料にはなるが。
だが、その考えを私は敢えて口にしない。なぜならケーレスが他の案を思い付いたようだったからだ。

「えっとだね……土に砂糖を撒くのはどうだろうか」
「砂糖……ですか? アレが肥料になると……!」

驚いたように目を丸くする老人。それにケーレスはこくりと頷く。
砂糖に含まれているブドウ糖は人間や動物の栄養源になるのは当然の事で、植物ともまた例外ではない。
土に引かれている水に砂糖を流し込む事で作物にブドウ糖が行き渡りその栄養ですくすく育つのだ。

「ケーレスの案は悪くない。だが、一つ肝心な事を忘れている」
「肝心な事……?」

私の意見に首を傾げるケーレス。そんな彼女の美しい髪を撫でながら。

「砂糖を撒けば虫が集まり作物が荒らされてしまう」
「ああ……そういうことか。言われてみればそうだね」

自分の意見の欠点を指摘され頷くケーレス。だが、その可能性も考慮していたのか、打開策を明示する。

「それなら食虫植物を植えれば良いんだよ。作物と食虫植物。それを交互に植える事で虫が来ても植物がそれを防いでくれる」
「ふむ……悪くない着眼点だな、ならばそれを実践してみよう」

今回はケーレスの奇抜な発想に委ねる事にする。私の発想でも肥料問題は解決するが普通すぎるのだ。
彼女の死神的発想。その発想は人智を超越した考えは見ていて飽きない。
私とケーレスは農民たちに食虫植物を植えるのと砂糖を撒くことを指示をする。

「な、なるほど……食虫植物にそんな使い道があったとは……同じ人間の発想とは思えない」




上には上がいるんだな…(白目)