魔界深く、邪神の神殿マップで迎えた最終決戦
先発マツリがコストを軽減、アイシャの落石、リノのサラマンダーが炸裂し敵を寄せ付けず快勝した。
王都に響く勝鬨、どこからか聞こえる「世界が平和になった」「王子軍万歳」「ポーラちゃん結婚してー」の声
安堵して凱旋する出撃メンバーから離れ、元瞬間火力担当のファルネは独りスチームタンクの中で泣いていた
田園時代で手にした汗、小人巨人をギリギリクリアした感動、そして何より出撃機会・・・
それを今の王子軍で得ることは殆ど不可能と言ってよかった
「フェニックス・・・」開く機会の無い閉ざされた魔導書に視線を落としファルネは悔し涙を流し続けた
どれくらい経ったろうか、ファルネははっと目覚めた
どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たい第三兵舎の床の感覚が現実に引き戻した
「やれやれ、日課のフェニックス召還ポーズの練習しなきゃね…」ファルネは苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、ファルネはふと気付いた

「あれ・・・?出撃の号令が聞こえる・・・?」
兵舎から飛び出したファルネが目にしたのは、城壁を埋めつくさんばかりのゴブリンだった
空を覆い尽くすほどのガーゴイルの群れが見え、地鳴りのようにオーガの足音が響いていた
どういうことか分からずに呆然とするファルネの背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「ファルネ、敵が物理100%回避、魔法耐性、超リジェネを持ってるの、一撃で倒せるのは貴方しかいないの」
声の方に振り返ったファルネは目を疑った
「エ・・・エステルさん?」  「なーに、ファルネちゃん、ちゃんと眼鏡つけた?」
「ケ・・・ケイティさん?アルティアの覚醒に使われたんじゃ・・・・?」
「もう、マスター、かってにケイティさんを餌にしちゃ駄目ワン」
「私のケット・シー…」ファルネは半分パニックになりながら編成表を見上げた
1番:ウズメ 2番:ケイティ 3番:ファルネ 4番:アイシャ 5番:キキョウ 6番:エステル 7番:ガラニア 8番:シャーリー 9番:王子
「…行くぞ、ファルネ」暫時、唖然としていたファルネだったが「お、王子…は、はい!いつでもいけます!」
全てを理解した時、もはや彼女の眼鏡には曇りひとつ無かった
「出れる・・・出れるんだ!」
クリッサから勝利のエールを受け取り、城門へと駆けるファルネ、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・

翌日、大歓声の中リノが第二覚醒を果たし、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った