後の世に英雄として名を残すであろう武にかけて並ぶ者なしのダリューンが、緊張に顔を赤くし震えているのがアルスラーンにはおかしく見えた。
「私は女性ともふれあったことのない未熟者だが出来る限りおぬしに優しく触れようと思う。そう怯えるな」
その言葉に頷きつつもぎこちなさを解くことのできないダリューンの姿に微笑みながら、アルスラーンは手を伸ばした。
その夜、二人はただの主従としての一線を越えた。

アルスラーン戦記第16巻より