【ポーラ交流2】
@ポーラ「ようやく、来たです……!」
お忍びで、というわけではないが、俺とポーラは二人きりで海辺の近くにある行楽用施設の一室にいた。
既に互いに水着姿で、海へと向かう準備はバッチリだ。
それじゃあ行くか、と彼女に言葉を投げるが――
@ポーラ「――待つです、王子」
と、止められてしまう。
どうしたんだ、と訊くと、
@ポーラ「準備運動はちゃんとしないとダメです」
@ポーラ「海に勢いよく入って心臓が止まってしまった
おじいさんの話を耳にしたことがあるです」
おじいさんって……。俺はそんなに年を取ってるようにみえるか、とポーラに問いかける。
@ポーラ「見えないです……」
@ポーラ「見えないですが、
それでも王子の心臓が止まってしまうのは避けたいです」
@ポーラ「だから、二人で一緒に準備運動するです」
俺に身を寄せて、上目にそんなことを力強く言うポーラ。
彼女なりに俺の身を案じてくれているということだろう。
それならば、と俺はポーラと一緒に準備運動をすることにした。
@ポーラ「それじゃあ王子、ここに座るです」
@ポーラ「そうです……ぺたっとお尻をつけて、両脚を真っ直ぐ伸ばすです」
言われたとおりに床に座ると、ポーラは俺の背後に回った。
すると次の瞬間、ポーラは俺の背中に両手をつけて、少しずつその手に力を加えていった。
@ポーラ「いいですよ、王子……そのまま、まっすぐに身体を倒すです」
ぐぐぐっと彼女に背を押されながら、俺は両脚のつま先にまで手を伸ばして屈伸する。
@ポーラ「わぁっ……王子、とっても身体が柔らかいのです!」
妙な感心を覚えたポーラが声を弾ませる。同時に、柔らかい感触が俺の背に触れる。
@ポーラ「……え?当たってる?」
@ポーラ
「何がです……?」彼女の声が、耳のすぐ傍で吐息と共にかかってくる。
そんなポーラに、わざとやってるだろ、と返すと
@ポーラ「……バレてるです」
@ポーラ「でも、こういう時にしか二人きりになれないですから、
少し大人っぽいことに挑戦してみたです」
大人っぽいことって……。いったい誰にこんなことを吹き込まれたんだ、と
問いかけると、
@ポーラ「ダニエラさんに教わったです」
…………。
はぁ、と俺は溜息をつきながら、ポーラに、そんなことは真に受けなくていいと返す。
@ポーラ「そうなのです……?」
@ポーラ「でも、王子がイヤがってる感じ……しないです」
それはそうだ。俺だって男だからな。それに、相手がポーラなら尚のことだ。
@ポーラ「私が相手だから……です?」
@ポーラ「そう、ですか……ふふっ♪」
そんなこんなで、互いに準備運動を終え、ようやく海へと繰り出そうという時になって、ポーラは俺の手を握った。
@ポーラ「……王子」
@ポーラ「今日は、二人きりなので……」
@ポーラ「あの……えっと……」
@ポーラ「おにいちゃまって……呼んでも、いいです?」
かなり前から、俺を兄のように慕っている彼女は、時々こんなふうに甘えてくる。
世界を救済するためにと冒険者となったポーラだが、その実、まだ内面は幼いのだ。
だからこそ、今日は精一杯甘やかそうと決め、そんな想いを示すように、俺は彼女の手を握り返した。
@ポーラ「……えへへ♪」
@ポーラ「それじゃあ行くです、おにいちゃま!」
@ポーラ「今日は、いっぱいいっぱい、おにいちゃまと遊ぶです♪」