――ローラさんの父親から電話が入ったのはいつなのか。
「逮捕される前日に電話が入った。ひどく怯えてた」

――どんな内容の電話だったのか。
「金を貸して欲しいと言う内容だった。すぐ返すから貸してくれと
頼んできたが、貸すわけがない。あの男はもう信用できる男ではない
からだ」

――ローラさんの父親ジュリップ容疑者が信用を失ったのはなぜか。
「事件が発覚したと同時に、自分の配下を置いて勝手に国外逃亡した
からだ。それにいろいろな所から金を借りまくっていた。
私の紹介でも金を借りてそのままだ。それに彼はもうマフィアではない。
この世界では生きていけないよ」

――ジュリップ容疑者の「海外療養費詐欺」というのは、
よくある手口なのか。
「あれは昔からあった詐欺のひとつ。その手口が流行る前は、海外で
携行品の盗難保険詐欺が主流だったが、あまりにも事件が頻発するので
保険会社も厳しくなって廃れたんだ」

ーーローラさんの父親はバングラディッシュ国籍だが、
日本国内ではどのようなマフィア組織にいたのか。
「彼は"パキスタン系マフィア"として見られていた。
日本国内ではパキスタン人とバングラディッシュ人は組んで一緒に
仕事することが多いからだ。マフィアと言っても各グループは5〜6人の
少人数が中心。それぞれが表向きはレストランとか雑貨輸入卸とか
昼間の肩書きを持っている」

ーー今回気になったのは、国際指名手配を受けているジュリップ容疑者が
なぜ日本へ入国できたのかということ。警察発表では税関との連絡は
取れていなかったとのことだが、イラン系やパキスタン系マフィアは
偽造パスポートも取り扱うこともあるのか。
「そんな危険な真似はしない。日本国内で数日泳がせて周辺関係者を
探っていたのかもしれない。とはいっても、今さら彼に会うような
人間はいない。マフィアのネットワークからはかなり嫌われているし、
借金もあるから身動きも取れなかったはずだ。オレだって、
もう二度と会いたくないね」