ただし、その際にも地元警察が捜査した痕跡は記録されてはおらず、また、近隣住民たちも、後日、噂を聞きつけて東京からやってきた新聞社の記者から、自らの被害について尋ねられると、お茶を濁してばかりで、被害届すら出されることはなかったそうだ。
「こういう仕事を長年するとわかるんですが、田舎の方へ行けば行くほど、よそから来た人間にはまるでその実態がわからない、“見えない風習”みたいなものがあるものなんです。
もしかすると、あの地域で起きていた強盗や輪姦の類も、そういうものだったのかもしれないですね」
それは古今東西、どこの地域にも該当する話だろうが、山本さんが言うように、よそ者には絶対に知られてはならないという性質を持った習慣や、不文律のようなものが存在する。
もしかすると、それが絡む形で生じた事件は、我々が想像するよりも思いのほか多いのかもしれない。
終わり