ところが近年では、痛みを完全に取り除く「CSEA」というものが登場しているという。
Combined Spinal-Epidural Analgesiaの略で、硬膜外麻酔と脊髄麻酔を併用した方法だ。
脊髄麻酔で一気に痛みを取ると同時に硬膜外へ管を入れ、持続的にも麻酔を効かせる。
荻島先生は、「この方法では痛みはありません。ですが、うんでいる感覚も随分少なくなります」と話す。

息むことができにくくなるため、鉗子(かんし)や吸引などで赤ちゃんを引き出すことが多くなる。
また、陣痛が来て、ある程度子宮口が開いてきてから麻酔を入れるため、それまでの痛みはある。
そのほか、気になるCSEA自体を挿入する痛みは、かなり細い針を使うため痛くないとされている。

CSEAは高度な医療技術であるため、産科麻酔を専門とした麻酔科医か産科麻酔医のトレーニングをしっかり受けた産科医のいる、大きな病院で受けることが望ましい。
興味がある場合は、HPなどで産科麻酔医についてしっかりした説明がなされている大病院を訪れてみるといいだろう。

現在、無痛分娩を考えている人は日本で4割程度いるという。
荻島先生の所属する順天堂大学附属練馬病院の本院(順天堂医院)では、経腟分娩の半数が無痛分娩なのだそうだ。
また、米国では7割が硬膜外麻酔を選択しているとされ、その点では日本は遅れていると言われていると荻島先生は言う。

「無痛分娩は、正確に言うと和痛(痛みを和らげる)分娩です。しかし、完全に痛みをとらなくても、それが半分になれば本人は楽になりますし、それで緊張が解け、お産がスムーズになることもあります」
(荻島先生)

痛みというのは人それぞれだ。硬膜外麻酔を入れる時も、ほとんど痛みを感じない人も感じる人もいる。また、緊張に強い人もいれば、弱い人もいる。
そして多くの人が無痛分娩を選択するようになってきているとしても、合併症などのリスクが全くないわけではない。

しっかりと医師と相談し、どの方法が自分に合っているかを選んでみてはいかがだろうか。

終わり