「依存症の最大の敵は“孤立”です。人と関わりを持つことで、寂しいと思う心の隙間を埋めないと、また必ずクスリに溺れてしまう。
我々は、そうならないための環境を、いつでも整えているんです。つまり、クスリを絶つには、周囲の理解と支えが必要なんですよ。
法律で薬物を取り締まるだけでは、なんの解決にもならない。刑務所に入ったところで、出所したとき、何をしていいか分からなくなったら、待っているのは孤独と不安です。それにとらわれたら、またすぐに逆戻りしてしまいますから」

薬物は犯罪だ。孤独で寂しくても、それに手を出さない人はいくらでもいる。ただ、それは薬物に出会わなかったことが幸運なだけなのだと、近藤氏は言う。

取材の最後に、田代氏は照れ臭そうに目を伏せながら、こう話してくれた。

「時間はかかりましたが、最近やっと、娘が連絡してくれるようになったんです。病み続けて、立ち直っていく姿を、どこかで見てくれていたのかもしれませんね。
それからリーダー(元ラッツ&スターのメンバーで歌手の鈴木雅之氏のこと)も、“いつでも見ているから頑張ってほしい”と言ってくれていると、人づてに聞いています。本当にありがたいですよね」

プレッシャーと孤独から薬物に手を染め、どん底まで落ちた田代氏が、そこから立ち直ろうと思えたのも、この施設をはじめとした周囲の支えがあったからなのだろう――。

終わり