戸叶和男『日本奇習紀行』

今でこそ日本にもその存在が定着し、都心部などの繁華街は、思い思いの仮装に身を包んだ若者たちでごった返すハロウィン。本場アメリカで制作されたハリウッド映画やドラマなどでは、子供たちが近隣の家々を回り、「トリック・オア・トリート!」と言いながらお菓子を集めて練り歩くシーンがしばしば登場するが、実はこうした子供たちが中心となるお祭りの類は、我々の住むこの日本にも少なからず存在しており、そうしたものの中には、当の子供たちからすると、“歓迎できない内容”のものも含まれているようだ。

「このあたりじゃ、昔は立春を迎える頃にね、男の子たちだけが参加する祭りがあって。でもその内容があまりに酷いものだから、もう何十年も前になくなってしまったよ」

かつて東北地方のとある地域にのみ存在していたという、その“奇妙な子供祭り”についてそう振り返るのは、当地で生まれ育ち、自身も幼き日にこの祭りに参加していたという、青木仁さん(仮名・67)。青木さんの話によると、その“奇妙な子供祭り”においては、俄かに信じ難い行為を、村の少年たちがさせられていたのだという。

「近所の家を訪ねまわって、餅だの小銭だのといったお土産をもらえるという点では、ハロウィンっていうんですか? ああいう外国のお祭りに似ているとは思うんですけれどもね。問題はその時の格好なんです。上は白装束、下は裸。そう、下半身は丸出しです。ですから、小さい子供はまだしも、年頃になってくると、本当に恥ずかしいんですよ」

楽しげな仮装に身を包むことで、その素顔すら隠せるハロウィンとは違い、当地におけるこの“子供祭り”においては、下半身裸という、当の少年たちからすれば、なんとも気恥ずかしい姿。なんでも、青木さんら当地で生まれ育った人々の証言によると、実はこの祭りが生まれた背景には、古くから当地に伝わる言い伝えが大きく関係しているのだそうだ。それは概ね、下記のような内容である。

その昔、この一帯を治めていた領主の嫡男が、従者も連れずに、単身、散策に出た際に、村外れを流れる小さな川に差し掛った時のことである。彼が何の気なしに、浅瀬をそのまま渡ろうとすると、あろうことか急に水嵩が増し、あれよあれよという間に、腰丈まで水が迫るという事態に見舞われたのだという。それでも、なんとかして対岸まで渡ろうとした彼は、懸命にもがくも、その思いに反して水嵩はさらに増していき、いよいよ首から上だけが水上に出ているという段となると、なんと、濁流の中から河童の子供が出現。「無事に川を渡して欲しければ、来ている袴を寄越せ」と言ってきたのだという。しかし、当時は着物すら貴重な時代。彼は一瞬、躊躇したものの、結局はその子河童の申し出を受け入れ、水中の中でもがきながら、なんとか袴を脱ぎ捨てたのだという。すると、瞬く間に水が引いていき、彼は無事に川を渡りきることができたのだそうだ。そして、無事に川を渡り終えた彼の背中に、その子河童は、貴重な袴を譲ってくれたことへの感謝の気持ちを述べつつ、その礼として、彼が病一つない頑健な肉体となり、長じては、立派な侍になることを約束してくれたのだという――要は、この時の話が後世まで受け継がれ、この“下半身裸”の少年たちが集落を練り歩くという、実に奇妙な祭りを生み出すことになったのだそうだ。

「……いやいや、河童だろうと鬼だろうと天狗だろうと、私らにとってみれば甚だ迷惑ですよ。なにせそんなおかしな言い伝えが出来てしまったせいで、あんな恥ずかしい思いをさせられたわけですから。あれから何十年も経っていますけれども、思い出すだけで未だに赤くなってしまいますよ」

続く

以下ソース
http://tocana.jp/2018/05/post_16720_entry.html

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