同様に、最近頻繁に起きている学校での無差別発砲事件でも、「男性的ステータス」が大きな動機になっている、と社会学者のキャサリン・ニューマン氏は説明する。
学校内での無差別発砲事件の場合、加害者はすべて男性だ。学校を狙撃する若者たちは集団にうまく参加できず、失望と屈辱を経験する。そのため、彼らはより魅力的になるために、彼らの「負け犬」的性格を無差別殺人によって変えようとしたのではないかというのだ。
「悲しいことに私たちにとって、アンチ・ヒーロー(ヒーローと闘う悪者)の役割はヒーローと同様に魅力的です」とニューマン氏は言う。

しかし女の子は、自分がアンチヒーローになることが魅力的であるという考えを植え付けられていない。女の子が集団内での自分のポジションに悩んだ場合、それは通常、自傷行為や友人に関して悪い噂を流す等の方法がとられるとニューマン氏は説明する。
識者によれば、最近では少女と少年間の攻撃性の差異は、より縮まってきている。映画やテレビには暴力的な言動の少女や女性が登場し、かつてとは違うタイプのヒロインになりつつある。しかし、一般的な暴力の格差は縮まっても、大量殺人等の破滅的な暴力に関しては性的格差はいまだ縮小していない。その理由は謎だ。

男性は生物学的に、暴力に脆弱性があるのかもしれない、と心理学者は言う。
そして、そしてその脆弱性と、人が幼い時に受ける虐待や薬物使用のようなストレス要因が組み合わさった時、人の犯罪リスクを高める可能性が研究で明らかになっている。
また一般的に男性は共感性ではなく、抽象的な原則に基づいて道徳的判断を下す可能性が女性よりも高いという。男性は自分にとって「正しい」暴力を行使する可能性が高いのかもしれない。

また次の2つは性差にかかわらず、大量殺人犯を生む要因となると言われる。

●自殺志向
イスラム原理主義を含む文化圏では、殉教は自殺防止のための「抜け穴」として働くかもしれない。また家族に精神的な病気と自殺願望を抱えた人物がいた場合、子どもも自殺衝動の危険因子を持つことが研究によってわかっている。サンバーナディーノの狙撃犯は父親から虐待を受け、犯人の父親は、子どもたちの前で自殺をすると常日頃から脅していたという。

●文化
文化は思いもよらぬかたちで精神疾患と相互作用を及ぼす。例えば専門誌「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・サイコロジー」の2014年の記事によると、米国では精神病患者が暴力行為を促す声を幻聴として聞く割合は70%、インドは20%、ガーナではわずか10%だ。私たちが「狂っている」と心で思っている人々は、身近にある暴力的な文化的メッセージをダイレクトに吸収した結果、大量殺人に及ぶ可能性があるというのだ。

歴史上、大量殺人を犯した女性は実在する。しかし女性の場合、銃を手に乗り込む選択は非常に少なく、今回のYouTube銃撃事件のアグダムはその少数派だったのだろう。将来は、ますます男性と女性の性差や格差が縮まることが予想されるが、そうなると無差別発砲事件の犯人の半分は女という日が来ることも十分考えられる。

終わり