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築地市場の後を引き継ぐ豊洲市場は、最新鋭の設備を誇る。もはや商品である魚が雨風に晒されることもなく、カモメの糞が落下することも、ネズミに囓られることもない。
しかし、市場は決して浄化できない“汚染”がこびり付いている。密漁品だ。全国各地の港からヨコモノ(密漁品)が運ばれ、正規の品と混じり合い、小売店を通して消費者の食卓に運ばれる。こうした密漁品は、ほぼ間違いなく暴力団のシノギであるため、消費者は否応なくヤクザと共犯関係になる。最新鋭の豊洲市場はそれをつなぐ媒介である。
実際、市場を管理する東京都中央卸売市場総務課は苦し紛れに言う。
「衛生面での抜き打ち検査などを実施していますが、扱われている水産物が密漁品かどうかの検査は特定も難しく、行なっておりません。現状、卸会社や仲卸会社との信頼関係に基づいているということです」
つまり密漁品の混入はチェックできず、野放しということである。資源の枯渇や環境破壊の原因とされ、その根絶が叫ばれるIUU(Illegal, Unreported and Unregulated=違法、無報告、無規制)漁業は日本の宿痾だ。
5年前、密漁アワビの売買を取材するため、築地市場の仲卸業者にバイトとして潜入した際、密漁品の横行する現場を目撃した。
築地での仕事中、知り合いのヤクザとばったり会い、「密漁品はないか」と訊ねたところ、とある業者を紹介された。密漁アワビはそこで堂々と売られていた。
「もちろん仕入れ値は買い叩く。キロ8000円が相場なら、密漁品の場合500円から3000円。仕入れ先は漁師が多い。不意の現金収入が必要になって、自分たちがいずれ獲るはずの(禁漁期間に密漁された)アワビを売りに来る」
その業者は、実際に「千葉県産」と偽装した静岡県産の密漁アワビを私に見せた。密漁と産地偽装を駆使することで、おおっぴらに密漁アワビを店頭販売するのだ。
働いていた仲卸業者の役員も、「(築地で密漁アワビは)売られている」と語る。いったい日本では、どのくらいのアワビが密漁されているのか。
平成15年7月の『養殖』に掲載された多屋勝雄氏(水産学博士)の調査では、全国のアワビ流通量から漁獲量と輸入量をマイナスし、他の要素を考え合わせて密漁の規模を割り出している。それによると、日本で取引されている45%、およそ906トンが密漁アワビの計算になる。我々はアワビを食べる時、2回に1度は暴力団に金を落としている。市場に流通する半分が密漁アワビ、言い方を変えれば盗品というのは異常な状態という他ない。
密漁アワビの売り上げをキロ4000円で計算すると40億円弱にも上る。アワビだけでこれだけの額だから、“黒いダイヤ”と呼ばれるナマコや、大アサリ、秋鮭などの高級魚介類を含めれば、軽く100億円産業となるだろう。
ウナギの稚魚で“白いダイヤ”と呼ばれるシラスウナギは、その3分の2が密漁及び密流通とされる。ロシアから輸入されるカニは、水産専門誌の『マリン・ポリシー』2017年10号によると、17〜25%が密漁・密流通であるという。
続く
以下ソース
https://www.news-postseven.com/archives/20181018_781840.html
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