2013年3月東京都足立区 皆川翔太くん(仮名)殺人事件

2012年?13年ごろ、東京都足立区の自宅アパートで次男の翔太くん(3=当時)をウサギ用のケージに監禁し死なせたとして、父親で無職の皆川忍(30=逮捕当時)と、母親の朋美(27=同)が逮捕された。被害に遭ったのは翔太くんだけではない。当時4歳だった次女に対しても、犬の首輪を付けたり顔を殴ったりしていた。のちに監禁致死や死体遺棄などの罪で起訴された夫婦に対する公判は2016年に開かれた。

夫婦には、朋美と前夫との間に生まれた長女を含めた7人の子供がいたが、逮捕前、児童相談所の職員が夫婦の自宅を訪ねたとき、翔太くんが死亡していたことを隠すため、マネキンを布団の中に寝かせ、眠っているように偽装していた。この理由を公判で問われた忍は、“家族がバラバラになることを防ぐため”だったと語った。

忍 「虐待と疑われて家族がバラバラになると思って……。児相に連れてかれちゃう」
弁護人 「あなた自身も施設で育ったんですよね」
忍 「はい。自分はそのとき親に捨てられたと思ったんで、そうなるかなと」

ふたりの出会いは忍が実母に紹介されたホストクラブでホストとして働いていた頃。ここに客として朋美が両親と来店したという。シングルマザーだった朋美とここで意気投合し、すぐに交際が始まる。結婚までもトントン拍子だった。忍もやはり家事を精力的にこなす父親で、家族の食事作りは主に忍が担当していた。

「基本的に煮物ができないので、炒め物とかみそ汁とか。あとはみんなでギョーザを作ったり、かき揚げ、唐揚げ作ったり……ある材料でネット検索してメシ作ったり……」

慣れないながらも家族のためにと、料理に奮闘していたようだ。ところが、大家族のためか、忍は徐々に、翔太くんの“食べる量”、さらに“振る舞い”が気になり始める

「ごま油や小麦粉、醤油をぶちまけたり、冷蔵庫のものを(勝手に)食べたり、お釜のご飯や他の子のオヤツ食べたり。生のシシャモとか、食ったらマズいでしょってものまで食べてたんで……」

なんでも食べてしまう翔太くんを預かって欲しいと児童相談所に頼むも断られ、ラビットケージに閉じ込めるようになった。

「次女が翔太の真似し始めてた。自分自身手を上げるのも嫌になってた。子供の頃お蔵に閉じ込められたことあったんで、行動制限、ぶっちゃけ効くかなと思った」とその理由を語る。その後、食事、入浴、オムツ替え以外、翔太くんをケージに入れっぱなしで、生活を続けていた。彼だけを家に残し、家族で外食するということも珍しくはなかった。翔太くんが亡くなる前日、2013年3月2日の夜もそのように外食して家に戻った。

朋美が食事を与え、家族が寝静まった翌日2時頃、翔太くんがケージの中から大声を上げ始めたという。「新手の嫌がらせ」だと立腹した忍が彼の口をタオルで塞ぎ、再び放置したところ、翔太くんは死亡した。

検察官 「翔太くん、嫌だったとは思いませんか?」
忍 「考えないです。嫌だったらこっちの言うこときいてくれればいいじゃん、ってのあったんで」

先の船戸雄大被告や村山彰被告と異なり、皆川忍・朋美夫妻は、お互いに行動を容認しあっていた。妻の朋美も、翔太くんをケージに入れていたことに関し、彼自身の行動に原因があったと語っている。

「仕方ないと思いました。どんなに言っても言うこときかないし、どんなに高いところにものを置いても、取りにいってしまう。行動制限するしかないと思いました」

夫婦の望まぬ行動を取るということで監禁し、他の家族の平穏を優先した結果、翔太くんは亡くなってしまった。忍には懲役9年(求刑懲役12年)、朋美には懲役4年(求刑懲役7年)が言い渡されている。

続く