杏林大学医学部名誉教授の佐藤喜宣氏(70)が、焼死体を解剖したときの貴重な経験を語ります。もしかして死亡推定時刻を…。ドラマのようなお話です。

 25年にわたって担当してきた警察大学校の検視官講習では「死体検死・検視」を中心に講義をしてきました。検視官は捜査の初動に関わる死亡推定時刻を特定します。死亡推定時刻を見極める3項目、@死斑A死後硬直B直腸内温度がすべて一致しない時には、必ず何かしらの問題があるはずだと考えるように伝えてきました。

 実際、私が担当した解剖の中には、「おかしいぞ」と感じる事件もありました。

 一人暮らしをしていた男性の木造2階建ての自宅が火事となり、その男性の焼死体が発見されました。事件性なしの焼死事件という扱いとなり、行政解剖案件として運ばれてきたのですが、解剖室に入った瞬間、においが違うと感じました。

 生きている人が煙に巻かれて焼死してしまったにおいと、死後に腐敗が起き始めた状態で焼かれてしまったにおいとは異なります。解剖室には、死んでいた人が焼かれたにおいが充満していたのです。肉や魚も新鮮なものと腐敗した状態のものを焼けば、においが異なることと同じです。

 私は解剖を行う前に検視官に電話を入れ「すぐに来てほしい、においが違う」と伝えました。当時私の教え子だった検視官はすぐに状況を理解し、行政解剖から殺人事件の可能性がある司法解剖に切り替わりました。

 火災現場には電気毛布、灯油の入れ物、ライター、出刃包丁が発見されており、出刃包丁の先端5センチには、亡くなった方の血液が付着していました。ただ発見当初は、現場の状況から自殺と判断され、行政解剖になったケースでした。

 司法解剖となり、ご遺体を検死解剖していくと、死後1日以上たっており、電気毛布で温めて腐敗現象を起こしてから火をつけた可能性が浮上してきました。もしも殺人事件であれば、電気毛布にくるんで腐敗進行を早めたことは、死亡推定時刻を意図的にずらす行為であり、法医学の知識を持っている人間の犯行である可能性が浮上しました。

 事件以降、法医学の知識を持っていた身近な人間の関与が疑われましたが、検察庁は最終的に不起訴としたため、事件にはなりませんでした。被害者の刺し傷の生活反応がわからなかったため、自殺なのか他殺なのかが断定できなかったのです。

 現場状況と解剖結果から、殺害後に1日おいて火をつけた他殺の可能性が高かったのですが、目撃者もいなかったので実証されませんでした。

 現在なら科学捜査が発展しているので、刺し傷の生活反応の検証の仕方によっては起訴できるかもしれません。私にとっては悔いの残った事件となりました。

 (構成・福山純生)

☆佐藤喜宣(さとう・よしのぶ)1949年、東京都生まれ。杏林大学医学部名誉教授。日本歯科大学、広島大学医学部客員教授。東京都と千葉県の児童相談所セカンドオピニオンも務めている。ドラマ「監察医 朝顔」の原作漫画の監修者でもある。

以下ソース
https://www.tokyo-sports.co.jp/social/health/1937940/

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