【男性】成長して会話はなくなったものの… 今でも固く繋がる兄弟の絆 あの時ボクは「兄として」ひと肌脱いだのだった[06/24]
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―[おっさんは二度死ぬ]―
僕には1つ年下の弟がいる。さすがに、おっさんとも呼べる年齢になると僕も弟もおっさんなわけで、特段に仲良く話すことがなくなってしまっていた。おっさん兄弟の会話ってやつはなかなかに難しい。特に1歳違いと年齢が近いと、歳を経るごとに年齢差が誤差みたいになっていくので、やはり難しい。
僕ら兄弟はおっさんになって会話をしなくなってしまった。いや、そうではない。僕ら兄弟があまり話さなくなったのは、おっさんになったからではない。よくよく考えるとそのずっと以前から、僕らはそこまで話をしなくなってしまっていた。
少年時代は一緒に野を駆け山を駆け、弟にパワーボムだとかプロレス技をかけて遊んでいたというのに、高校生くらいになると滅多に会話をすることはなくなってしまった。もちろん思春期的な何かもあったかもしれない。
ただ、ここで勘違いしていけないのは、仲が悪いだとか、憎しみ合っているだとか、下手したら殴り合いのけんかになるだとか、そういった険悪なことではなく、本当にただ純粋に会話をしないだけなのだ。
それは何かのかけ違いであって、最初は些細なきっかけだったのかもしれない。そして、ひとたび会話をしなくなってしまったら今度は会話をすること自体がちょっと気恥ずかしく、気持ち悪いものに感じてしまう。そういったちょっとしたズレが蓄積していき、会話しないという状況が生まれるのだ。物事はすべてが繋がっているのだ。
そうして会話しないままの日々が続いたある日のこと、異変が起こった。僕が高校3年生で、弟が高校2年生のときだったと思う。
「ちょっとあんた」
部屋で寝ころびながらマンガを読んでいたら、弟がそう話しかけてきたのだ。幼いころは「お兄ちゃん」と呼んでどこに行ってもついてきていたというのに、さすがに「お兄ちゃん」とは気恥ずかしくて呼べなかったらしい。
「なんだよ」
僕もぶっきらぼうに返事をする。微妙な静寂が流れた。おそらくお互いになんとも居心地の悪い気味悪さを感じているであろうことは理解できた。
「何も言わずに1万円貸して欲しい」
弟の口からでた言葉は意外なものだった。
「な、なにに使うんだよ」
ぶっきらぼうに返答しつつも、あまりに意外なその申し出に僕も動揺が隠せていない。
「それを聞くなっていってんだよ」
弟はあからさまに不快感を示しはじめた。
「お、そうだったな、すまんすまん」
なぜか一瞬にして立場が逆転してしまい、1万円貸してやる僕の方が下手に出て気を遣う状態になってしまった。なかなか才能があるぞこいつ。金を借りる才能がある。
僕はその時、アルバイトをしていてけっこう潤っていた。おまけに、幼いころに弟の貯金箱から金を盗んでいたという負い目もあったし、なにより、頼られたことがちょっと嬉しかった。
「ほらよ、ちゃんと返せよ」
財布から1万円札を抜き取り、かっこつけてピシッと弟の前に差し出した。弟はそれを奪うようにして受け取り、お礼も言わずに自分の部屋へと戻っていった。
「あいつが俺に頼るかねえ……」
嬉しくもあり、感慨深くもあり、様々な感情が入り乱れていたけど、もっとも大きな感情は別のところにあった。
「なにに使うんだ」
続く
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気になって仕方がない。彼はいったい1万円を何に使うつもりなのか。
その答えはすぐに示された。弟の部屋からピンク色のチラシがでてきたのだ。おそらく郵便受けに投げ入れられたやつだろう。いかがわしい匂いがプンプンするチラシだった。ザラザラと安っぽいピンク色の紙にデカデカと「エロ本、通信販売!」と書かれている。どうやら現金書留で金を送ると厳選されたエロ本が配達されてくるというサービスのようで12冊8800円という微妙に高い値段設定がなされていた。
「これを買ったな」
当時はインターネットなど発達しておらず、未成年はAVのレンタルもできなかった。エロ的なサムシングを入手するには書店でエロ本を購入するくらいしか手段がなかったが、それはやはりハードルが高かった。近所の本屋のじいさんがかなり強面なので、そこでエロ本を買うにはかなり強いハートが必要だった。
「ふふ、あいつも成長しやがって」
嬉しくもあった。鼻を垂らし、木の枝を振り回しながら僕の後ろをついてきていた弟の姿が思い出される。いつまでも子どもだ、子どもだと思っていたら立派な大人だ。自分の欲求に従い、あまり話したことがない兄に金を借りてまでエロ本を入手したいと考えるまでに成長していたのだ。喜ばしいやら寂しいやら、そんな複雑な感情が入り乱れていた。そこにもうひとつ、感情を揺さぶる事実が浮かび上がってきた。
「これ、柿沢が騙されたやつだ……」
僕はこのチラシのことをよく覚えていた。安っぽいピンク色の紙に、「エロ本、通信販売!」という勇ましい文言。特にこの「通信販売!」という部分をよく覚えている。「激安!」だとか「エロ本!」だとか「厳選!」ならビックリマークで強調する理由がわかるのだけど、「通信販売!」と通信販売である部分だけを強調するのはおかしい、そこの部分はあまり衝撃的ではない。その部分が印象的だったからよく覚えている。
2か月くらい前だったと思う。クラスメイトの柿沢がこれと同じチラシを持って鼻息を荒くしていた。エロ本を買うという。絶対に買うという。子どもの時から貯めているお年玉貯金を下ろすとまで言っていた。現金書留の封筒まで買ってきて大興奮の大車輪、とにかくあのときの柿沢はすごかった。
その1か月後。柿沢は黄色く変色した12冊の文庫本をもってやってきた。エロ本ではなくこれが送られてきたと。古本が12冊送られてきたと。1つは「女としての生き方」みたいな柿沢には一切関係ない本だった。
あまりに落胆する柿沢をみんなで励まそうと、その古本の小説を読み込んで、エロいシーンを抜き出し、ほらここちょっとエロい、もはやエロ本だよこれ、密室で死んだ全裸の女だって、くっそエロい、と励ましたのをよく覚えている。
まさか、それと同じものに弟が騙されているとは思わなかった。もう止めても無駄だろう。数日前に現金書留の封筒を持っていたから、たぶんもう金を送ってしまっている。
なんだか心の奥底のいちばん柔らかい部分がギュッと閉まるのを感じた。弟は独り立ちしたのだ。いつも僕の後ろをついて歩いていた弟が、自分で考え、自分で望み、自分で決心して僕に金を借りてエロ本を購入した。その第一歩がの先が詐欺である可能性が高い。そんな結末であっていいはずがない。
続く それから一週間して、茶色の包みが我が家に届いた。弟にあてた小包だ。届いたとき、家には僕しかいなかった。
そのサイズは明らかに小さかった。もっとこう、エロ本ってのは写真ものであれ、漫画ものであれ、だいたいが大判なサイズだ。それが12冊ある場合は結構な大きさになるはず。それなのに包みの時点で文庫サイズが12冊とわかってしまった。その小包は明らかなる詐欺のオーラに包まれていた。
「くそっ!こんなことがあっていいはずがない」
本当はダメなんだろうけど、もう時効だから言ってしまう。僕はその弟宛ての小包をビリビリと破いた。そして中身を見た。
やはり柿沢と同様、騙されたようで、よくぞここまで状態の悪い中古を集めたな、という文庫本が11冊。最後の1冊がすごく小さいポケット辞書みたいなやつだった。ページも張り付いている。完全にふざけている。
なんだかその12冊の汚い古本を見ていたら無性に腹がたってきた。どうして弟の決心が、弟の自立が、弟の冒険が、こんな形で毀損されなければならないのだ。これは詐欺ではない。一人の人間の旅立ちに対する冒涜だ。
気が付くと、その12冊のクソ中古本を押し入れの奥底にしまいこみ、新たに奥底から12冊のエロ本を取り出してきた。僕の蔵書だ。それも選りすぐりの選抜メンバーだ。めちゃくちゃ抜ける号のベストビデオとかも入っている。
それを茶色の包装紙で綺麗に包み、宛名を書いて玄関に放置する。帰宅した弟にぶっきらぼうに告げる。
「おう、なんか届いていたぞ」
「中身みてねえだろうな」
「見るかよ、まさかエロ本だったりして」
「ちげえよ」
そんな会話を交わし、それからまた僕らはほとんど会話をしない兄弟に戻ってしまった。
もうあれからかなりの時間が経ってしまった。いつのまにかエロは進化し、エロ本を通販なんて考えられない状態になってしまった。
いまだに実家に帰るとぶっきらぼうな弟に会うことがある。もはや弟ではなく、ちょっと知っているおっさんといった佇まいだ。ほとんど会話もない。
ただ、彼がどんなにぶっきらぼうでも腹は立たない。なぜなら僕は知っているからだ。いまだに実家の押し入れの奥底に、弟の神蔵書として大切に保存されている12冊のエロ本があることを。彼はかわいらしくも、ずっとあれを大切に保管しているのだ。
「これはもともとお兄ちゃんのやつだったんだぞ」
「まじかー、お兄ちゃんセンスいいなー、このベストビデオとかめっちゃ抜けるわ」
押し入れを開けるたびにそんな会話が幻聴のように頭の中で展開されるのだ。会話なんていらない。このエロ本だけで僕ら兄弟の絆はずっとそこにあるように感じられるのだ。 たとえ兄弟でも互いに良いところを認めていなければダメだろう >>1
>弟にパワーボムだとかプロレス技をかけて遊んでいたというのに、
>幼いころに弟の貯金箱から金を盗んでいた
これはダメだろ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています