【男性】「おっさんってエスカレートしますよね」 ただただ感謝されたくて… とある職場で起きた“感謝に飢えているおっさん”の悲哀
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
0001逢いみての… ★2022/09/30(金) 23:28:37.70ID:CAP_USER
―[おっさんは二度死ぬ]―

「おっさんってエスカレートしますよね」

 そう話しかけられたのはキャンプファイヤーを見つめる暗闇でのことだった。

 山奥で行われたとある宿泊イベントに参加した。いよいよイベントのクライマックス、盛大なるキャンプファイヤーが始まった。昼間の熱気がまだ残る9月の夜。夏の終わり、少し感傷的な雰囲気の中、炎が燃え上がる。そんな雰囲気の中でふいに話しかけられた。パチパチと燃え盛る薪の音が闇に響き、赤い粒子が地面に落ちて闇に溶けていく。群衆が炎を取り囲み何かに思いを馳せる。その中で彼の声ははっきりと通った。

「実は今日、patoさんが来るって言うんで、会えたら話そうと職場の面白おじさんの話をストックしておいたんです。是非とも日刊SPA!に書いてください」

 ストックしておくな。そう言いたい気持ちをグッと堪える。

 どうやら、この日刊SPA!の連載においてあまりに面白おじさんの話を書きすぎたのか、僕自身が面白おじさんのスペシャリストみたいに勘違いされている節がある。色々な人から近くにいる面白おっさんの情報が持ち寄られるのだ。このままでは面白おっさん研究の第一人者みたいになってしまうかもしれないが、僕自身も嫌いではないので、できればどんどん面白おっさんエピソードを持ち寄って欲しい。ただ、雰囲気のあるキャンプファイヤーのシーンで持ち出すのはちょっとやめて欲しい。

 その彼が持ってきたエピソードはこうだった。

 彼が臨時で働きに行った職場は比較的不便な場所にあった。駅からも遠く、周囲に店舗もないような場所で、そこで深刻になるのが従業員の昼飯問題だった。もちろん、気の利いた飲食店があるわけではなく、それどころかコンビニすらない場所だ。多くの職員が朝の段階で弁当を買っておいたり、手作り弁当を持参したりしてしのいでいた。

 そんな中で、あるおっさんが脚光を浴びることとなる。仮にその人の名前を松川さんとしよう。松川さんは営業車に乗って外回りを担当する社員だ。誰かがちょっと松川さんに軽い気持ちで頼んだことから物語が動き出した。

「松川さん、今日は外回りですか? 僕ちょっと、朝に買ってくるの忘れちゃって、お昼に戻ってくるならコンビニで弁当を買ってきてもらえませんか?」
「いいよ」

 弁当を購入して戻ると、同僚にすさまじく感謝された松川さん。ただ弁当を買ってくるだけでこれだけ感謝されるのか、戸惑いと喜びが入り混じった表情をしていたらしい。

「こんなのでよければ外回りの時はいつでも買ってくるよ。気軽に言ってな」

 頼りがいのあるセリフだ。ただ、ここでおっさん研究の第一人者である僕から見たおっさんポイントが一つ生じている。おっさんは謙遜する場所を間違いがちなのだ。「こんなのでよければ」と謙遜しているが、その「こんなの」はコンビニ弁当のことである。コンビニにも、その仕事に従事する人にも失礼な謙遜だ。「こんなことでよければ」こそが正解なのだ。おっさんはここを間違えがちだ。

 松川さん、かなり気を良くしたのか、彼の業務に朝のルーチンがひとつ追加された。

「おれさ、今日、外回りなんだけど弁当とか買ってこようか」

 親しい同僚にそう聞いて回るのだ。弁当を買ってくるだけで深く感謝された成功体験が鮮烈で、忘れられない。また感謝されたいという思いが強かったのだろう。

「え、マジすか、じゃあお願いします。困っていたんですよ」

 外回りにいき、数個の弁当を持って帰社、そして同僚に感謝されるという日々が続いた。最初のうちこそ、外回りに時に弁当を買っていたが、このあたりから少し怪しくなってきて、弁当のために外回りを午前中に入れる傾向が見え始めた。いよいよもって怪しい感じになってきた。

 弁当購入が続いたある日、松川さんは考えた。

「もっと多様なメニューの中から弁当を選べるようにしたらいいのではないだろうか?」

 複数の種類からチョイスできるよう、簡易的なメニュー表を作成し、同僚に配布した。もうこの時点で親しい同僚だけでなく、職場の同僚全員にサービス展開していた。“Uber松川”の誕生である。

続く

以下ソース
https://nikkan-spa.jp/1861692

★関連板★
■えっちな話題なら”ピンクニュース”
http://mercury.bbspink.com/hnews/
■新作AV情報なら”AV情報+”
http://mercury.bbspink.com/avplus/
0002逢いみての… ★2022/09/30(金) 23:28:54.27ID:CAP_USER
 ここに最大のおっさんポイントがある。

 おっさんはエスカレートするのである。特にその見返りが“感謝”だけである場合に生じやすい現象だ。おっさんは感謝に飢えていて、それを求めてエスカレートすることが多々ある。多くの場面で忌み嫌われ、煙たがられるおっさん。そのおっさんが活躍する場面が訪れてしまうとハッスルしてしまう。おっさんは感謝だけでエスカレートしてしまうのだ。

「もっと色々なコンビニのお弁当も食べたいな」
「お待たせしました! 各種コンビニに対応いたしました! お弁当カタログをご覧ください!」

 Uber松川のサービスがどんどん充実していく。メジャーコンビニ全てを制覇した充実のランナップ。これを揃えるには外回りではなくコンビニ周りをしなくてはならないのだ。完全にエスカレートしすぎている。

 もうこの頃になると松川さんの表情は「俺のこの職場での使命は社員全員のお昼の弁当を支えることだ」となっていたらしい。本当の使命は外回り営業です。

 ここで注意すべきは、Uber松川は一切のマージンも手数料も取っていないという点だ。本当に見返りが感謝だけで、おそらくちょっとはポイントなどを稼いでいたのだろうけど、その手間を考えるとやはり微々たるものだ。ただただ、ありがとうと言われるためだけにサービスを充実させていく。

「いつもありがとうございます」
「なあに、俺の仕事だからね」

 松川さんの本当の仕事は外回り営業だ。完全に見失っている。もう松川さんは弁当の注文を受けて各種コンビニを周ってと、午前中は仕事になっていなかったらしい。

 そんなある日、ついにエスカレートするおっさんはクライマックスを迎える。出社すると松川さんのデスクにはQRコードが記載されたパネルが置かれていた。

「ご要望にお応えしてPayPay払いに対応しました!」

 ついに電子マネーによる支払いに対応。さすがにやりすぎだろ。

 QRコードを読み込むことによりUber松川に弁当代を支払えるようになった。かねてから支払い時の小銭やお釣り問題で利用者に不便を強いていたのでそれを解決した形だ。ものすごく便利になったのだけど、さすがにやりすぎだろ。

「みんなが便利に弁当を手に入れられるようにするのが俺の仕事だからね」

 何度も言うけど、松川さんの仕事は外回り営業だ。

「こうしてですね、PayPay支払いに対応したところで、仕事もせずに弁当の斡旋ばかりしていると上層部にばれたらしく、松川さんは処分されることとなったんです」

「むしろそこで歯止めがかかってよかったのでは?」

「そうです。あのままいったら業者から食材を仕入れて弁当屋を開業していたと思います。仕込みにどれくらい時間がかかるか計算して『5時起きかあ』って言っていましたから。なるべく安全な食材で弁当を提供したいけど、コストが悩ましいねって言っていました」

 さぞかし良心的な弁当屋が社内に誕生していたに違いない。

 処分され、いっさいの弁当業務を放棄することとなった松川さん。生気を抜かれた生きる屍みたいになったらしい。もう俺の本分は失われてしまったから、みたいな表情を見せていて、そのまま消え行ってしまいそうな儚げな雰囲気を身に纏うようになったらしい。何度も言うけど、松川さんの本分は外回り営業だ。

 おっさんは良かれと思ってどんどんエスカレートする傾向がある。ただただ、感謝が欲しくておっさんはエスカレートしていくのだ。

「おっさんはエスカレートするよね」
「ええ」

 エピソードを持ってきてくれた彼とキャンプファイヤーの炎を見つめる。燃え盛る炎はどんどんとエスカレートしてクライマックスを迎えた。そして、キャンプファイヤーが終わり、一気に人がいなくなると同時に消火され、真っ黒な消し炭だけが残り、闇に同化していた。
0003夜更かしなピンクさん2022/10/01(土) 03:33:13.39ID:scmhZN7W
AI「適材適所
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています