近年、ミドル世代を中心に広まりつつあるのが「介護脱毛」だ。これまで脱毛といえば、若い世代がやるものというイメージが強かったが、将来受けるかもしれない介護に備えてアンダーヘアの手入れをする中高年層が増えているという。「リゼクリニック新宿三丁目院」院長の大地まさ代氏に介護脱毛の実態について聞いた。

 ◇  ◇  ◇

 都内に住む51歳女性は、もともとアンダーヘアの脱毛に興味があったものの、施術時に他人に見られる恥ずかしさから躊躇していた。それが、行きつけの美容院に行った際、クリニックで使われている医療用レーザー脱毛機でも白髪には反応しないと聞き、「白髪が増えたら脱毛できない。今が最後のチャンスかもしれない」と、クリニックでのアンダーヘアの脱毛に踏み切った。

「医療レーザー脱毛は、黒や茶色のメラニン色素に吸収される波長のレーザーを照射し毛根組織を熱で破壊して脱毛させるので、白い毛には反応しません。脱毛の施術を受けることはできても十分な効果を得られにくい。脱毛に適齢期はありませんが、脱毛効果を高めるには白髪が増え始める前がベターです」(大地氏)

「介護脱毛」とは、将来、自身が介護されることを想定し、排泄後の拭き取りや清拭時に生じる介護者の負担を減らす目的で行う脱毛のこと。実際に脱毛をした人の介護を行っている介護士はこうメリットを話す。

「アンダーヘアがあると、排泄物が毛と絡み付き、時間が経つと排泄物は乾いて硬くなります。そのため、温かいタオルを当てて軟らかくしてから取り除かなければならず、清拭に時間と手間がかかるのです。また、おむつににおいがこもりやすいといった問題もあります。介護脱毛をしている方の場合、そうした時間と手間が短縮できるので、とても助かります」

 ほかにも、アンダーヘアによって排泄物を完全に拭き取れないと、尿路感染をはじめとした感染症のリスクにつながる。

 リゼクリニックが行った統計調査によると、リゼクリニックでアンダーヘア脱毛の契約を行った40歳以上の女性患者数は開院年の2010年9月から22年8月末の時点にかけて約68倍にまで増加していたという。

 さらに、近年は女性だけでなく男性においても介護脱毛の需要が急速に拡大しつつある。

「アンダーヘア脱毛を契約した40歳以上の男性患者数は、5年前と比べ5.8倍に増加しています。男性の場合、すでに介護脱毛を行ったパートナーの勧めで受けに来る方が多い印象があります。また、一般的な脱毛サロンでは施術者が女性の割合が高いですが、当院では患者さまと同性の看護師が施術を行うので男性でも安心して通えるとの声を聞いています」(大地氏)

 アンダーヘア脱毛の場合、毛が生え変わる約2カ月おきに施術を受け、ある程度まで毛をなくしたい場合には、毛の質や太さにより個人差はあるが、10回を目安に通院する必要がある。

 実際に10回の施術を終えた51歳女性は、当初は陰部をさらすことの羞恥心や照射時の痛みが心配だったが、回数を重ねるうちに慣れ、現在は日々のアンダーヘアの手入れの煩わしさから解放され満足しているという。

「ただ、毛がないので月経中は経血が前方に垂れやすい。サニタリーナプキンの位置を前にずらしたり、なるべくうつぶせで寝ないよう工夫しています。それでも、長い将来のことを考えると、脱毛するメリットは大きいと思います」(都内在住51歳女性)

 ただし、健康状態や皮膚の状態によっては、脱毛を受けられないケースもある。日焼けをしていたりタトゥーがあると、レーザーが皮膚表面に反応してやけどするリスクや、光線アレルギーの場合、照射により重篤なアレルギー反応を起こす可能性が高い。

「ほかにも、毛嚢炎をはじめとした肌の炎症、服薬中の薬によっては施術を受けられないケースが少なくないので、初診のカウンセリング時に医師に申し出てください」(大地氏)

 快適なシニアライフを送るためにも、気になる人は脱毛を検討してみてはどうか。

以下ソース
https://hc.nikkan-gendai.com/articles/279817