【男性】ひょんなことで大便ブースに閉じ込められてしまったおっさんがトイレで体験した身の毛もよだつ怖い話
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
ビジネスホテルも行きつけのカプセルホテルも満室で、仕方なしに飛び込んだ個室ビデオ店で、最後に1つだけ空いていた個室を譲り合った、というよく分からない経緯で仲良くなった松岡さんというおっさんがいる。
その松岡さんは、会う度に怖い話をしてくれる。
「それはエアポケットのような時間じゃった」
昔話の語り部を意識しているのか、いつも出だしだけは古めかしい口調で言ってくる。あと必ず「エアポケットのような時間」という文言が入る。たぶん松岡さんは何らかの勘違いをしていてエアポケットをホラー的なにかと認識している。
以前に、死んだネコがエアポケットから帰ってくる夢を見た、と話していたので異界とか死後の世界みたいなニュアンスで使っていると思う。まあ間違いを指摘するのも野暮なのでそのままずっと放置している。
ちなみに、エアポケットという言葉自体も、もともとは間違いから生まれた言葉だ。飛行機が高度を急激に落とす原因として考えられていたもので、そこでは空気が希薄な場所があって、それで高度が落ちると考えられていた。だからこのような名称がついている。しかしながら、昨今の解析で、急激に高度を落とすのは局地的な下降気流によるものだと判明しており、別に空気が希薄なわけではないので、エアポケットという呼び方自体を使わなくなっている。
つまり松岡さんはもともと間違いから派生したエアポケットを間違えて使っているという人なのだ。
「仕事をしていたらお腹が痛くなったんだ。そうなると、まあ、当然ながらトイレに行くわな」
松岡さんの怖い話は、幽霊だとか妖怪だとか怪物だとかそういった異界めいたものではなかった。エアポケットを異界めいたニュアンスで使うクセに、そういったものはまったく出てこなかった。
「まあ、ウンコするわな」
話の途中で、本当に真剣に聞いているのか確認を取ってくるのでまあまあ面倒くさい。
「そうですね、ウンコに行きますね」
と反応しないと先に進まないのだ。ウンコをするかしないかなんて確認が必要な部分ではない。そりゃ腹が痛いならするだろ。その辺は確認がなくても先に進んで欲しいと思うけど、そういうわけにはいかないらしい。
「ウンコも終わったし、さあそろそろ出るかって、なったんだけど、そこに誰かがトイレに入ってきたんだよ。どう考えても同僚の誰かが入ってきたんだよな」
まあよくありがちなやつだ。
「そうなると声を押し殺すよな」
「そうですね、押し殺しますね」
この辺はちょっと女性には伝わりづらいかもしれないけど、この連載の読者に女性はいないだろうという確信を持っているので、そのまま続けさせてもらう。
ウンコをしていて、さあ出ようかという時に誰かが入ってきた。その入ってきた誰かは小便器に向かっている。その場合、けっこうな確率でこちらは声を押し殺す。気配すら消す。そういう対応をとる。
職場という状況を考えると、その小便器に向かう男は高確率で同僚だ。そこにバコンと個室から出ていく、そうなると「あ、こいつウンコしてたんだ」と思われてしまうわけだ。それは避けたい。
それだけならまだしも、その同僚がトイレに入った瞬間に「めちゃくちゃ臭いな」と考えていた場合、「こいつか」と思われてしまう。それを避けるため、小便器の男が出るまで個室から出るわけにはいかないのだ。
さらには、出られなくなっているこの状態を小便器の男に悟られてはいけない。なんだか負けた気がするからだ。だから声を押し殺し、気配を消す。ぜったいに動きが止まる。
「HUNTER×HUNTERでいうところの“絶”よ」
「HUNTER×HUNTERでいうところの“絶”ですね」
HUNTER×HUNTERでいうところの“絶”なのかどうかは分からないけど、そう答えないと先に進まないのでそう答える。
この辺の感覚は小便器と大便ブースが分かれている男性ならではの感覚で、個室ブース=ウンコとなるところが原因だろう。女性側はあまりこういうことないんじゃないかな。
「たださあ、そいつが小便器のところでゴソゴソと何かをやっているわけよ。小便なんか1分もあれば終わるだろ、それなのに出て行かない」
たしかに、同じように大便ブースで声を押し殺すことあるけど、たまにおまえ小便器でなにやってんだってYouTubeでもみてんの、ってくらいに長いやつがいる。こちらはその間、ずっと“絶”を使わねばならず、それだけにかなり疲れてしまう。HUNTER×HUNTERでいうところオーラを使い切るというやつだ。
続く
以下ソース
https://nikkan-spa.jp/1965319/ 「それどころか、そいつがどこかに電話をかけ始めた気配がしたんだ」
その何者かがトイレから出て行かず、どこかに電話をかけ始めた。これはまあ、勘弁してくれよと思うけど何者かの気持ちもわからんでもない。人にあまり聞かれたくない電話をトイレでかけることはよくある。ただ、大便ブースが閉まっているので人がいるわけで、聞かれてしまう。本来はかけるべきではないけど、たぶん松岡さんの“絶”が完璧だったんだろう。気付かずにかけはじめたようだ。
「あ、もしもし、あ、はい、あ、はい」
電話の主の声を聴いて確信した。松岡さんは小便器でゴソゴソしている何者かが森山だと確信した。森山は松岡さんの同期で、けっこう嫌なやつらしい。どうやら松岡さんのことをライバル視しているよいうで、ちょろちょろと嫌がらせじみたことをしてくるみたいだ。
「はい、18時半からで、リオさんを90分で指名したいのですが……」
松岡さんは確信する。森山のヤツ、風俗店に予約の電話を入れてやがる。リオさんを指名しようとしている。なるほど、確かにそういう電話なら誰にも聴かれたくないはずだ。トイレからかけるのもわかる。
「けれども、俺に聴かれてしまったのが運のつきよ」
松岡さんはさらに声を押し殺した。憎き森山の弱みを握れると思ったからだ。
「はい、それでパンティ持ち帰りのオプションをつけたいんですが」
森山、めちゃくちゃ高いオプションをつけようとしている。風俗嬢の履いていたパンティを持ち帰ることができる小粋なサービスで、だいたい、なみいるオプションの中でいちばん高いやつだ。
「もう完全に弱味を握ったと思ったよ。こんどなにか言ってきやがったら“うるせーパンティ持ち帰り“って言ってやろうと思った」
「いいですね」
松岡さんは息を殺しながらもしめしめ、とほくそ笑んでいた。森山さんの風俗店への電話はまだまだ続いていた。
「はあ、18時30分は予約が入っている。じゃあ19時30分はダメ? あ、26時までぜんぶ埋まっていますか」
森山さんはリオちゃんの予約を断られていたらしい。
「じゃあ、マロンちゃんはいけますか? はあ、マロンちゃんも全部だめ? 本当ですか?」
リオちゃんがダメならマロンちゃん、でもそれでもダメ。そんな大人気な繁盛店なのかと思ったらそうではないらしい。
「女の子から苦情がたくさん来ている? 出禁?」
どうやら、ちょっとオイタが過ぎたようで、もう利用をお断りしたいと言われているようだ。これには松岡さんも大喜びだ。
「そこをなんとか。もう二度とやりませんので、本当に心を入れ替えました。本当にそこをなんとか。最後のチャンスを」
情けないほどに懇願する森山さん。あまりの情けなさを見せているので、完全に弱みを握ったと松岡さんの“絶”も解けかかってしまったらしい。
「ありがとうございます!」
必死の懇願が通じたようだ。まあ、いちばん高価なパンティ持ち帰りをオプションにする客だ。金の払いは良かったのかもしれない。最後のチャンスを与えてもらったのだろう、森山さんの声も弾んでいたらしい。
「はい、気を付けます。ありがとうございます。じゃあマロンちゃんで、はい、90分でパンティ持ち帰りで」
そう言ったらしい。いちばん高いやつだ。
「本当に情けないやつだと思ったよ。職場のトイレから風俗店の予約をし、パンティ持ち帰りまでつけてやがる。おまけになにをやったのかしらねえけど、出禁寸前になって情けないほどに懇願している。俺がこんな情けない状態になったら死を選ぶね」
しかし、ここからが松岡さんにとって衝撃の展開だった。
「はい、予約名はいつものように松岡孝典でおねがいします」
松岡さんの名前だった。
「俺の名前を勝手に使っているどころか、フルネームだぜ。店の奴らは松岡孝典オイタがすぎるから出禁にしようぜ、とか松岡孝典パンティ持ち帰り大好きって思ってるんだぜ」
あまりのショックに、大便ブースの中で酸欠みたいになり口をパクパクすることしかできなかったらしい。
松岡さんに対する嫌がらせなのか、それともたんに本名を名乗りたくなくて、適当に名乗ったのか不明だけど、たぶん前者だろう。じゃなきゃフルネームで名乗る理由がない。
続く 「おそろしいだろ。まさにエアポケットよ」
「エアポケットですねえ」
松岡さんは、やはりエアポケットの使い方を間違えていて、理解できない不思議な世界という比喩で使っていた。ただし、あまりの嫌がらせに松岡さんは大便ブースの中で酸欠みたいになり口をパクパクすることしかできなかったので、それを考えると、もともとの意味であるエアポケットはずいぶんと適切なのだ。はじめて松岡さんが正しい意味でこの言葉を使った。 >個室から出ていく、そうなると「あ、こいつウンコしてたんだ」と思われてしまうわけだ。それは避けたい
そんなの、小学生が学校で大便するときの感覚。
どっちにしろ個室を出入り、あるいは使用中ならウンコ確定やん ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています