【身体】命に関わる“激しいつわり” 「妊娠悪阻」 ついに原因解明 治療に光
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0001逢いみての… ★2024/01/16(火) 22:08:35.95ID:CAP_USER
 つわりの症状が異常なほど重くなり、激しい吐き気と嘔吐が続く「妊娠悪阻(おそ)」は、妊婦を衰弱させ、命にかかわることもある疾患であり、妊婦の約0.3〜3%が発症する。その原因や仕組みはよくわかっていなかったが、米南カリフォルニア大学ケック医学大学院で女性健康科学を研究するマレーナ・フェイゾ氏らは、妊娠悪阻に「GDF15」というホルモンがどのように関わっているかを示す画期的な論文を2023年12月13日付けで学術誌「ネイチャー」に発表した。

 フェイゾ氏は、博士号を取得したばかりの1996年に第1子を妊娠した。妊娠中はひどい吐き気と嘔吐に悩まされ、出産までに2回も救急搬送されたという。1999年に第2子を妊娠したときの症状はもっとひどく、点滴や栄養チューブ、7種類の薬の投与も受けたが、効果はなかった。氏は衰弱し、話すこともできなくなった。

 寝たきりで24時間の介護が必要になったフェイゾ氏は主治医から、「ご主人の気を引こうとしているだけでしょう?」と言われたという。氏は結局、15週目に流産した。

 流産後まもなく、氏は米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の博士研究員として研究に復帰した。妊娠悪阻について学べることをすべて学びたいと考えたからだ。それから約四半世紀が過ぎ、氏はついに今回の論文を発表した。

 妊娠悪阻を経験した女性なら、この状態を「つわり」とひとくくりにしないでほしいと思うだろうと、論文著者の一人で、非営利団体「妊娠悪阻教育研究(HER)財団」の共同設立者兼事務局長であるキンバー・ウェイクフィールド・マクギボン氏は言う。

 妊娠悪阻の一般的な症状としては脱水と体重減少が挙げられるが、重症の場合は流産したり、ウェルニッケ脳症(ビタミンB1の不足による神経障害)で妊婦が命を落としたりすることもある。また、妊娠悪阻の母親から生まれた赤ちゃんは、早産、低体重、言葉の遅れを含む神経発達障害のリスクが高いことが、多くの研究で示されている。

 妊娠悪阻に対して最初に投与される制吐剤(嘔吐を抑える薬)が効かない妊婦は多いと、ノルウェー、ベルゲン大学臨床科学科の教授である内科医のヨーネ・トロビク氏は言う。そして、脱水や電解質異常を和らげるために点滴や栄養チューブを施しても、母体を救うために妊娠を終わらせなければならない場合もある。

 その深刻さにもかかわらず、妊娠悪阻は医学界でも見過ごされがちだ。HER財団の医療アドバイザーを務める産婦人科医のエイミー・ブレクト・ドーシャー氏は、自身も2回の妊娠で妊娠悪阻に苦しみ、そのうちの1回は流産している。

 氏は当時の主治医の冷淡な態度を振り返り、「医師の中には、標準的な治療法に反応しない女性に対して、原因は心理的なものにあると決めつける人がいるのです」と話す。「私自身も、自分が妊娠悪阻を経験するまでは、医師としてそのように判断する傾向がありました」

 フェイゾ氏が1999年の流産後、最初にしたことの一つは、妊娠悪阻になる人の割合や、妊娠悪阻に影響を及ぼす要素を知るためのオンラインアンケート調査だった。氏のもとには驚くほど多くの回答が寄せられた。その中にはマクギボン氏からの回答もあり、フェイゾ氏によると、「妊娠悪阻に関する情報がネット上にはまったくありません。私は妊娠中ですが、出産後に妊娠悪阻に関するウェブサイトを立ち上げるつもりです」と書き添えられていたという。

 マクギボン氏のウェブサイトは、2002年にHER財団となり、現在は大学や研究機関と連携し、患者の家族を支え、患者や医療提供者に対して情報を提供している。マクギボン氏によれば、財団を立ち上げて以来、世界中の約1万家族の相談を受けているという。

 やがてHERのウェブサイトに掲載されたアンケート調査の結果をもとに、妊娠悪阻は遺伝する可能性が高いことを、フェイゾ氏とマクギボン氏らは示した。フェイゾ氏はその後、原因となる遺伝子を調べるために米国立衛生研究所(NIH)の助成金を申請したが却下された。

 2010年、氏の兄弟が誕生日に23andMe社の遺伝子検査キットをプレゼントしてくれた。検査キットの利用者は、同社に遺伝子情報を提供するだけでなく、健康に関するアンケートに答えることもできる。そこでフェイゾ氏はひらめいた。同社に連絡して、妊娠悪阻についての質問をアンケートに含めることができないか聞いてみたらどうだろう? 「そうしたら質問を入れてもらえたのです」とフェイゾ氏。

続く

以下ソース
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/24/011500025/
0002逢いみての… ★2024/01/16(火) 22:08:47.05ID:CAP_USER
 2018年、氏とマクギボン氏らは、23andMeの利用者の遺伝子データと健康調査データを用いて、妊娠悪阻とGDF15というホルモンとの関連を示した。それまでの研究から、GDF15の濃度は妊娠初期から中期にかけて上昇することや、悪液質(がん患者によく見られる食欲や体重の減少などを伴う状態)を引き起こすことは知られていたが、妊娠悪阻との関連が示されたのはこれが初めてだった。

 同じ頃、GDF15が、呼吸や意識や嘔吐などの基本的な機能をつかさどる脳幹の細胞に結合することが研究により明らかになった。GDF15の妊娠悪阻への関与を裏付ける発見だったが、同じ一人の女性でも、あるときの妊娠では妊娠悪阻になり、別の妊娠ではならない場合がある理由はまだわからなかった。

 フェイゾ氏らは今回の研究で、GDF15の大部分は母親ではなく赤ちゃんに由来すること、そして、その分泌量は赤ちゃんの遺伝的特徴によって決まるので妊娠のたびにばらつきがあることを発見した。妊婦の吐き気や嘔吐の程度は、GDF15に対する妊婦の感受性によって決まることも明らかになった。

 研究者らは、妊娠前にGDF15の作られる量が平均以下だった女性は、妊娠初期の典型的なGDF15の増加に対して過敏であるため、妊娠悪阻を発症するリスクが高いことを発見した。対照的に、妊娠前にGDF15の作られる量が多かった女性は、吐き気や嘔吐をほとんど報告しなかった。このGDF15の効果はマウスによる実験でも確かめられた。

 ブレクト・ドーシャー氏は、これらの発見が近いうちに治療につながると信じている。しかし氏は、過去の事例を振り返ると、妊婦に薬を投与することには慎重になるべきだと言う。その一例が1960年代初頭に薬害を引き起こしたサリドマイドだ。つわりを和らげるために妊婦が飲んだサリドマイドは、胎児の手足などに重度の奇形を引き起こしてしまった。

 一方、フェイゾ氏らは楽観的だ。氏らが有望視している薬は、ほかの疾患用ではあるものの、すでにテストされているからだ。フェイゾ氏は、妊娠前にGDF15の血中濃度を上げて妊娠悪阻を予防する薬や、妊娠中にGDF15の濃度を下げて症状を食い止めたり軽減したりする薬を検証したいと考えている。

 フェイゾ氏は現在、血液中のGDF15濃度を上昇させる「メトホルミン」という薬をテストするための研究資金を申請している。メトホルミンは糖尿病の治療薬だが、すでに多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)患者の不妊治療や、海外では一部の妊娠糖尿病の治療に使われている(編注:日本では妊娠中または妊娠している可能性のある女性には投与しないこととされている)。

 GDF15阻害薬のなかには、悪液質のがん患者を対象とした臨床試験が行われているものもある。フェイゾ氏は、これらの薬の安全性が臨床試験や妊娠中の動物を使った研究で示されれば、妊婦でも試験ができるのではないかと期待している。

 1月9日には米サンフランシスコのバイオテクノロジー企業NGMバイオ社が、「NGM120」というGDF15阻害薬について、妊娠悪阻への効果を検証する臨床試験を始めるために米食品医薬品局(FDA)と協議中だと発表している。フェイゾ氏はこのプロセスでNGMバイオ社のアドバイザーを務めることになっている。
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