韓国のコンビニエンスストアが東南アジア進出を加速させている。インバウンドで絶賛されている日本のコンビニほどの“フルスペック”でないにもかかわらずだ。いったい、なぜ? その謎を解き明かすため、流通ウォッチャーの渡辺広明氏がソウルへ飛んだ――。

 1974年5月、東京・豊洲に日本初のコンビニとなるセブン-イレブン1号店がオープンした。それから15年が過ぎた89年、韓国・ソウルにセブン-イレブン1号店が誕生。これが韓国コンビニ(ピョニジョム)の始まりとされる。

 コロナ禍以降、日本のコンビニ大手3社の出店数は減少に転じており、国内店舗数は約5万7000店に落ち着いている。一方のピョニジョムは約4万6000店まで増え続け、人口(約5156万人)で比べると韓国のほうが“コンビニの多い国”となっている。

 その内訳を見てみるとGS25(約1万5800店舗)、CU(約1万5500店舗)、セブン-イレブン(約1万1100店舗)の3強がひしめき合う構図だ。

「もともとCUはファミリーマートとフランチャイズ契約を結んでいましたが2012年に独立。ミニストップは日本より多い約2600店を韓国に出店していましたが22年に撤退。現地のセブンに統合されています。歴史的に日本のコンビニの影響を受けていますが、やはり大きく違うところがありましたね」(渡辺氏)

【@店舗が狭く日販も低い】
「都市部を中心に店舗が狭く日本の半分程度なので、サンドイッチやおにぎりなど中食系の品揃えは申し訳程度しかない店が大半でした。外食や屋台のテイクアウトが浸透しているのでその牙城を崩せないのかもしれません。ただ即席めんの種類が豊富なこと、お菓子は日本のコンビニのようにプライベートブランド(PB)だらけの空間になっていないのでワクワク感がありました」

 日販(1日の売り上げ)には大きな差がある。

「日本ではおよそ50万〜60万円が平均日販ですが、韓国で話を聞いたところ15万円程度にとどまるそうです。小規模店舗だから基本的にはワンオペ。人件費をできるだけ削ったとしてもオーナーは苦しいと思いますね…。既に過密だからこそ海外進出しなければいけないとも言えるでしょう」

【A2+1(ツープラスワン)割引】
 ピョニジョムでよく見かけるのが「2+1」のポップ。2つ買うともうひとつがおまけでもらえるという割引で「1+1」のパターンもある。

「若者の買い物を見ていると、2+1がある商品なら迷わず3つ持っていく人が多いです。そもそもコンビニが定価販売というのは日本と同じ。だから定価を高いと考える年配の利用者は少なくて利便性を優先する若者が多いように感じました。2+1はメーカーにとっては負担が重いですが、客単価を確実に上げる施策としては間違いないと思います」

【Bトイレやコピー機はほぼほぼ存在しない】
「共用建物内で営業している場合が多く、スペース的に余裕も場所もない。なので現地の人はカフェや地下鉄の駅、デパートなどのトイレを利用されるそうです。日本だと当たり前のマルチコピー機もありません。こういった面から日本のコンビニがライフライン化しているのに対して、韓国のコンビニは生活を支えるというより補助するイメージが適切かもしれません」

 渡辺氏の現地リポートを聞けば聞くほど「日本のコンビニが圧勝!」と思えるが、渡辺氏は「海外で商売するのはそんなに単純じゃない。東南アジアではピョニジョムが日本のコンビニの店舗数を抜いています」と指摘する。

 改めて冒頭の謎に立ち戻ろう。日本のコンビニが商品数やサービスの豊富さでまさるのに、なぜ海外では苦戦してしまうのか?

「日本が“フルスペック”の日系もしくは日式コンビニを目指しているのに対して、東南アジアではもっと簡易的なコンビニが求められているのかもしれないというのが視察して感じたところです。かつて携帯電話や家電の分野で、とにかく高性能な製品で攻めた日本企業が、安くて使い勝手のいい新興国メーカーに敗れてしまいました。二の舞いにならぬよう、各国の実際のニーズに応じた簡易コンビニもしくは無人コンビニを展開していかなければなりません」

 少子高齢化による国内の人口減は日韓共通だ。韓国のGS25は今月、海外進出を始めて6年でベトナムとモンゴルに500店以上を出店したことを発表し、27年までに1500店を目指すという壮大な目標を掲げるなど意気軒高。ニッポンのコンビニも負けてはいられない!

以下ソース
https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/290555