与党が新年度予算案の自然成立が確定する期限だった2日の衆院通過を強行したため、週末の国会は衆参ともに関係者はドタバタだった。

 異例の土曜日開催になった衆院予算委員会と本会議の対応に加え、4日から参院で予算委が始まることになり、官僚は日曜日も質問取りや答弁書作成に忙殺された。卒業シーズンの週末が急に潰れ、霞が関からは岸田首相に対する怨嗟の声が聞こえてくる。

 4日の衆院通過でも参院できっちり仕上げれば年度内成立には間に合うのに、なぜ岸田首相は2日にこだわったのか。

「現場は4日の衆院通過でも構わなかったのに、総理は『何が何でも2日までに』と譲らなかった。とにかくかたくなでした。それで、総理は予算が成立したらすぐに衆院を解散するつもりだという見立てが急速に広がっている。選挙の日程から逆算して、年度内成立を確実にしたとみられているのです」(与党国対関係者)

 予算成立後、ただちに解散すれば、衆院補選が予定されている4月28日に総選挙の投開票日をぶつけることができる。補選全敗なら勃発するとみられる岸田降ろしを封じることができるし、なにより9月の総裁選で再選を狙うなら、それまでに解散・総選挙に踏み切って勝つことが必要条件だ。

「それだけではありません。岸田総理は安倍派にブチ切れているんです。自分はしっかり仕事をしているのに、支持率が低迷するのは安倍派の裏金問題と統一教会問題のせいだと思っていて、政倫審に出ることを渋った安倍派幹部の対応にも激怒していた。こうなったら、今すぐ選挙をやって安倍派を殲滅させてやるくらいの勢いです。裏金議員の大量落選で議席を減らしても、与党で過半数を維持できれば自分の続投は可能だと考えているようです」(官邸事情通)

 自分の不人気を棚に上げて安倍派への恨みを募らせる岸田首相は、2月29日の衆院政治倫理審査会に出席した際、弁明の冒頭で「後来の種子いまだ絶えず」という吉田松陰の言葉を引用して謝罪。この言葉は、安倍元首相の葬儀で昭恵夫人も使っていた。参列者へのあいさつでこの一節に触れ、「種をいっぱいまいているので、それが芽吹くことでしょう」と語ったのだ。

「昭恵さんはいい意味で使ったが、岸田総理があえてマイナスの意味で使ったのは、安倍派に対する怒りのメッセージでしょう。政倫審が安倍元総理の肖像画がかかる第5委員室で開催されたことも、安倍派への当てつけのようでした。政倫審に出席した安倍派幹部は居心地が悪かったと思います」(無派閥の自民中堅議員)

 いま選挙になれば、ただでさえ安倍派議員は厳しい。しかも、近いうちに自民党は裏金議員の処分を決める方針だ。仮に「党員資格停止」処分の期間中に選挙になったら党の公認は出せず、安倍派はますます苦しい戦いを強いられる。

 常識で考えれば、この低支持率で議席を減らすことが確実なヤケクソ解散・総選挙に突っ込むことは考えづらいが、誰より愛着があったはずの派閥を真っ先に解散し、呼ばれてもいない政倫審に出席する岸田首相のことだ。ニヤニヤしながら衆院をいきなり解散することも十分あり得る。

以下ソース
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/337000