小泉進次郎氏「農協改革」の狙い JA全農の全国組織廃止も
・高橋洋一(元内閣参事官・嘉悦大教授)
夕刊フジ(ZAKZAK):2016.09.13

 自民党の農林部会が進める農業改革で、部会長の小泉進次郎氏は、全国農業協同組合連合会(JA全農)に照準を定めている。
その狙いは何だろうか。

 農業改革では、農協が鍵を握っている。
ひと口に農協といっても、地域の個別の農協(単位農協)のほか、事業ごとに県組織と全国組織がある



 農協改革を行う場合、地域の単位農協には政治的な集票力があるので手をつけにくい。
そこで、全国組織がターゲットになる。
もともと、農業は地域性がポイントであるので単位農協は重要だが、画一的な指導を行う全国組織が単位農協の自主性を阻害すれば、農協全体、ひいては農民のためにもならないからだ。

 農協改革を目指した改正農協法は、昨年8月に成立した。
その柱は、JA全中の持つ強大な権限の源とされる、単位農協に対する監査・指導権の廃止だ。

 残されたのはJA全農である。
金融事業の全国組織である農中やJA共済連は、単位農協にとっても不可欠な存在であり、もはや金融事業なくして都市部の単位農協の存続は不可能なので、農中やJA共済連が改革の俎上(そじょう)に乗ることはないからだ。

 もっとも、単位農協の金融事業は、本来の農家である組合員以外の準組合員によって成り立っている面もある。
先の農協改革も、準組合員を容認することの引き換えとして、JA全中の権限を剥奪したものだ。

 JA全農の改革の方向としては、全国組織をなくして各地域単位農協が独立、地域の実情に沿ったサービスを提供するか、全国組織を温存し、弱い立場の農家の声を農政に反映させ政府からの補助金を巻き上げるか−のどちらに進むかが問われている。

 いずれの方向も、地域単位農協は残すものだが、進次郎氏の農協改革の方向は前者である

 進次郎氏は次の10年には確実に自民党のスターになる逸材だ。
ただし、今はあまりに若すぎる。
そこで、農協改革という課題を与えられたわけだが、昨年の改革によって、進むべき方向性がわかりやすく、進次郎氏が次のステップに進むにはもってこいの課題といえる。