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2021年8月6日  財政破綻の真の問題は国民生活の破綻  島澤 諭 (関東学院大学経済学部教授)


富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。
02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。15年4月から中部圏社会経済研究所研究部長を経て、22年4月より現職。


■100円の商品が1万円になるハイパーインフレーション

…しかし、現在の日本の場合、経済は右肩下がりもしくはせいぜい横ばいで、安定的に税の増収が見込める状況にはない。

…現在は、毎年150兆円超もの国債が安定的に消化されているが、今年度の国債発行予定額は236兆円にも上り、こうした安定的な国債の市中消化ができなくなってしまうと、国債金利の高騰を防ぐためにも、日本銀行に買い支えてもらうしかほかに選択肢がなくなる。

 しかし、信認が失われてしまった国債を買い支える日本銀行が発行する日本銀行券の価値が将来的に維持されるとはとても考えにくく、通貨価値が毀損され、結局、インフレが昂進し、最悪の場合ハイパーインフレが発生することになる。

 極端な話、終戦直後並みの100%のハイパーインフレが発生するとすれば、これまで100円だった商品が1万円になってしまう。物価がこれだけ大きく跳ね上がることになれば、毎月の給与では生活を賄えなくなる状況が訪れる。総務省統計局「家計調査」でみると、
平均的な勤労者世帯の家計(勤め先収入)が毎月53.7万円となっている。インフレと給与の改定のスピードの違いにもよるが、物価上昇に賃金上昇が追いつかないとすれば、一時的であるにせよ、実質所得は現在の5400円程度の肌感覚となってしまう。

 さらに、ハイパーインフレーションの発生により日本銀行券の価値が落ちることで、外国通貨との取引条件が極度に悪化するため、極端な円安となる。
激しい円安は、輸入の際に強烈な価格上昇が起きることを意味する。