〜クリスマス1ヶ月前〜
(ディナーは夜景の見えるフレンチ、イタリアン、いや和食もいいか……)
(いや自宅で奮発したケータリングを取ってリラックスするのもいいかもな)
(そうとなればツリーとオーナメントとリースと揃えなければならないものがたくさんあるな……)
「降谷くんクリスマスは……」
「ああ、今追ってるヤマがその近辺でなにか動きがありそうなんでチームで張り付きですね」
「そうか……」
「僕に気にせず好きに過ごしてくださいね。下手したら年明けまでかかるかもしれないので」
「そうか……」
〜クリスマス当日夜〜
「あれ〜秀兄帰るの? もう遅いし泊まってかないのかよ」
「これ以上母さんの小言を聞いていたら手が出かねん。さっさと退散するに限る」
「兄さんも少しは落ち着いたかと思ったのに相変わらずだね」
「お前に言われたくはないな。『由美たん』とさっさと籍入れろよ」
「それこそお前に言われる台詞じゃないだろう秀一」
「あはは、じゃあまったねー秀兄!」
(ん? 寒いと思ったら雪か)
(折角のホワイトクリスマスも降谷くんがいないのではな)
(今頃庁舎に缶詰か。まさか現場に出向いていないだろうな)
「……い……かい……!」
(彼はすぐ無謀に突っ込んでいくきらいがあるからな。それで何とかしてしまう実力があるのが厄介だ)
「あか……! 赤井!」
(いつでもそばで守ってやりたいが。そんなこと言えばいやがられるだろうが)
「なにニヤニヤしてるんだ赤井秀一いいいいいいいいいいいい!」
「ぐふっ……! ふ、ふる、いや安室くんなぜマンション前に」
「まだ仕事終わった訳じゃ無いですけどね! 着替えを取りに家に戻った帰りです」
「入れ違いか。shit! もう少し早く帰って来ていたら君と過ごせたのに」
「滞在時間5分もないから大して変わりませんよ」
「それでもキスの一つも出来たのに」
「貴方本当にアメリカ人ですね。そんな顔して」
「君は本当にcoolだな。そんなsweetな顔して」
「はいはいアメリカ人アメリカ人。……なあ赤井」
「ん?」
「ご馳走いっぱい食べましたよね?」
「ああ、まあな」
「お腹いっぱいですよね?」
「いやもうだいぶ消化されてきたとは思うが」
「じゃあそこのコンビニまで付き合ってくれません?」
「構わないが……」
「お待たせしました!」
「随分たくさん買い込んだな」
「部下達への差し入れです。あとこれ、はい」
「なんだ? チキン?」
「僕もほら。クリスマスですし」
「あ、ああ……」
「日本ではこの時期になると米国発祥のフライドチキンチェーンが繰り返しCMをうつんです。『クリスマスにはチキンを』ってね」
「確かに見たな。なぜいつでも食べられるチキンをクリスマスだからといって強調するのかわからんが」
「それについては諸説ありますけど。でも、そのおかげ様で日本人にはクリスマス=チキンって刷り込まれてるんですよねえ」
「少しでもクリスマス気分をということか」
「ええ。……CMではチキンを家族で囲んで笑いあって食べていた。ずっと憧れてたんです。今日貴方と食べられて良かった」
「降谷く……!」
「おっと往来ですよ赤井。ハグはだーめ。じゃあ僕仕事戻るんで、メリークリスマス!」
「くっ、帰ってきたら覚えてろよ」
翌年のクリスマスはアホほどKFC買ってきて二人で消費出来ないだろ!と怒られる赤井さんの姿が