わいの安室夢聞いてくれ




わいは安室透の彼女や
彼はシャイやからみんなの前では言うてくれんし二人っきりで会えんけどポアロでわいが視線を送るとわいにだけ特別な笑顔で微笑んでくれるしわいがお会計するときは他の人より0.01秒長いんや
わいは彼を1分1秒でも長く見つめてたいから彼の仕事上がりに奥ゆかしくそっと後ろ歩くんや
彼もそんなわいに気付いてて時々ちらっとこっち向くんやけどわいは大和撫子やから恥ずかしくて影に隠れてまう
そうすると意気地無しのわいを叱るみたいに彼は先に帰ってまう
わいもっと積極的にならんとって思うんやけどなかなか踏ん切りがつかん
でも彼女なんやから頑張らんといかんな
けど最近彼に付きまとう怪しい男がおるんや
眼鏡かけた糸目の大学院生でポアロ常連の眼鏡小学生が昴さんって読んどった男や
そいつは彼に詰めよって隙だらけだのまたかだのなんか責めよる
失礼なやっちゃ
物陰からハラハラ事態を見守っとったわいの目の前であろうことか糸目はキスしやがった!
驚いとると彼が見たこともない怒り顔で「ストーカーなんて別にほっといても害はないんだから!」ってそいつを突き飛ばした
いやいや害あるやんキスされとるやん
彼があんま無防備やからあんな糸目にストーカーされるんやね
彼女としてわいがなんとかせんといかん
やっぱ直談判やろか
あいつの住み処はわかっとんねん
ここらでも有名な工藤邸の居候や
直接彼に付きまとうのは止めてくれって訴えて聞き入れてくれんようなら実力行使しよう
わいはか弱い女やから護身用に刃物とスタンガンとネットで買ったエアガンと拘束用に手錠とあとバンドソーくらいあれええかな
はぁ緊張するわでもこれも全て彼の為やしな彼女やもん頑張らんと
でもわいもあほやないから正面から堂々と入るなんてことせんで
大の男に敵うわけないしなあいつ大学院生の癖にエエからだしとるから
裏口の窓の鍵付近割って侵入や
よし一階にはおらんな
時刻は深夜2時
寝とってくれたら色々楽なんやけど
ん?二階の寝室から音がするな
ちっまだ起きとんのか面倒やな
でも扉開けざまにバンドソー叩きつけたらイケるやろ
会話?誰か他にもおるんか?

「あっ……沖矢さ……そ、こばっか……」
「ここがお好きなんでしょう?あむろさんは。ほらぎゅっと噛むと中がヒクヒク締まりますよ……」
「あん……っやぁ……そんな強いの痛……」
「痛いのが好きなくせに」

絶え間なく矯声が上がって規則的にベッドが軋む音が聞こえとる
なんやこれ嘘やろ嘘や嘘嘘うそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそうそや嘘やろなんでどうしてどうして
裏切った?わいの彼氏やのに嘘やなんでどうして男に嵌められてよがっとるん違うやろなあ
「嘘やぁあああああああああ!」
扉を開けた瞬間横から殴り倒されるわい
薄れ行く意識の遠くで彼の声が聞こえる
裏切り……もの……


「やれやれやはりこの女性でしたか」
「あなたのせいですよ」
「何がです?」
「彼女はただ見つめているだけの無害な人でした。あなたが刺激するからこんな凶行に走ったんです。かわいそうに」
「こんなに凶器を持って不法侵入する人間ですよ。遅かれ早かれ行動を起こしていました。むしろ早期解決出来たことを誉めてもらいたい」
「ふん……」
「ところでさっきの音声データ頂いてもよろしいですか?」
「囮用の?」
「ええ。おかずにしようかと」
(無言デリート)
「もったいない。おや?どこへ」
「用が済んだので帰ります。犯人は警察につきだしておいてください」
「もう遅いですよ?泊まっていかれては……音声の続き……したいでしょう?」
「……っ!……他人のいる前でそんなこと出来るか!」

「やれやれ帰ってしまったか。お前のせいだぞ、忌々しいストーカーめ。……殺すか?」

次に目が覚めたときわいは警察に捕まっとった
なんでこんなことになったんやろ……
わいはただ……最初はただ……喫茶店でイケメン店員を見とるだけで良かったはずやったのに……