>>353
まるで休日の中華街の喧騒の隙間から漂ってくる食のかおり。
「あそこに行きましょう」
彼女もそのにおいに惹かれたようだ。
やれやれ、僕はその先の水餃子が食べたいと思っていたんだけどな。
ニコッ、と笑う。その微笑みが呆れた僕を従わせることを知っている。
もういない彼女の記憶が蘇る。柔らかな皮に包まれた餡のように僕を包み込んだ。
目を開けると台所に母親がいて、親子丼を作っていた。