わいの妄想が実現するんやな!
少年れーくんのゼロサム妄想SS


背の高いひまわり畑の奥に隠された組織の研究所
白い入院着ひとつ身に付けた子供が冬の立ち枯れのひまわりの中を息を切らせて走る
一緒に逃げ出した子供はとうにはぐれたが後ろは振り返らない
少しでも止まれば"大人たち"がきっと追い付いてしまう
後ろからごうっっと音と熱が届く
誰かがひまわりに火を付けたのだ
それは逃がすくらいなら始末すると考えた大人か逃げ切れないと自棄になった仲間かわからない
だが冗談じゃないと少年は思った
死ぬつもりなどない自分は生きてあんな狭い世界から出ていくのだ
必死に足を動かすが熱はどんどん近付いてくる
ちりっと襟足を焦がす感触がした
(もうだめかっ!?)
そう思った瞬間少年の足元から地面が消えた
ついでドスンという衝撃
大きな穴が地面に空いていたのだ
頭上を見上げると炎が覆い尽くしている
この穴の酸素は持つのだろうか
不安を抱えたまま少年はぎゅっと丸まり疲れからそのまま意識を失うように眠ってしまった

目が覚めたとき最初に目に入ったのは丸く切り取られた真っ青な空
のっそりと穴から抜け出すと迷宮のようなひまわりは焼き尽くされ広い広い平地が広がっていた
……奥にあったはずの研究所姿を消して

「ってことがあったんですよねぇ」
「見事なひまわり畑だな」
20年ぶりに訪れたそこは記憶にある灰色のひまわり、そして焼け野原とは違う鮮やかなひまわりたち
この奥には今でも研究所があると錯覚させるようなどこまでも続く花の迷宮
「……」
「行ってみるか?」
「いいえ行きません。あそこにはもう何もない。全部、終わりましたから」
所有者のいないひまわり畑から2〜3本拝借し赤井は安室に手渡す
大きなひまわりを抱えた安室はひまわりよりも鮮やかな笑顔で微笑んだ