「なぁ風見…君って唐揚げ好きか？」
「…はい？」
「弁当のおかず、ちょっと作りすぎたんだよ。せっかくだから食べてくれないか」
「え…いいんですか？」
「いいんですかもなにもこっちからお願いしてるんだ。遠慮するな」
「で、ではありがたく…あ、箸取ってきます」
「あーそれはめんどくさいからいい。ほら、こうすればいいだろ。はい、あーん」
「…は？」
「だから、あーんって」
「えっ…い、いや…それは色々と…」
「なんだ？上司の施しになにか不満でもあるのか〜？」
「そ、そうではなく…」
「嫌ならいいんだ。他を当たる」
「そっ、それはダメです！」
「なんだよそれ、君めんどくさいな」
「…分かりました。観念します」
「素直でよろしい。はいじゃあ、あーん」
「あ、あーん……お、美味しい…」
「だろ。僕の力作だ」
「こんな美味しいもの、久しぶりに食べました…」
「…そんなに？そんなに美味しかったか？」
「はい、勿論。最近はコンビニ飯ばかりでしたから尚更」
「ふふ、うれし。他になにか好きな食べ物とかは？」
「そうですね…肉じゃがとか」
「可愛いな〜君。肉じゃがか、了解」
「了解って…作ってくるってことですか？」
「それ以外になにか？」
「いやいやいやいやそんな畏れ多いです！わざわざ降谷さんにお手数おかけする訳には」
「あーんまでしといて何言ってるんだ」
「それとこれとは…」
「なーんてな。1人で自炊するとついつい作りすぎるんだよ。あくまで作りすぎたものを分けてるだけだ」
「す、すいません、とんだ勘違いを」
「大丈夫だ。肉じゃが、楽しみにしといてくれ。…あと、勘違いならしてもいいんだぞ」