とくになにもなく終わるゼロしこ後赤安SS


「買いかぶりすぎだよ……」
少年のその言葉をきっかけに降谷はくるりと踵を返した
少年もまたこちらに背を向けた気配を感じる
今、事件を通して束の間重なった二人の道が再びベクトルを違えていく
(僕には彼のように"ただ一人"の為に生きることは出来ない)
それが出来る少年のことを少し羨ましく思う
自嘲気味微笑んで足を進める
失った血液で少し目眩がする体は足取りが重い
国際会議場の屋根端までたどり着き出口は、とうつむきがちだった視線を上げた瞬間ちかっmとした光が目に入った
「……三流」
それは紛れもなくスコープの反射光だった
狙撃の為に身を潜めるスナイパーがスコープ光で位置を気取られるなど言語道断
しかしこれはわざとだということは降谷にはわかっていた
軽く背後を探る
少年は無事屋根から降りたようだ
軽くため息つき、降谷は反射光の方へ顔を向け片手を上げ指をくいっと曲げた
「come」
そのままズルズル座り込む
さすがに、つかれた

ドドドドドドドドド
軽く意識を手放していた耳に響く地響き
何かが物凄い勢いでやってくる
重い瞼をこじ開けた降谷の目に飛び込んで来たのはライフル片手に土煙をあげ爆走する赤井秀一だった
「ちょっ!おま!銃刀法!いや変装!っていうか徒歩か!じゃなくて……!ああもう!」
「降谷くん!迎えに来た!帰ろう!」
そういうやいなや素手で壁を登り始める赤井
速い!速すぎる!通常のクライミングの3倍だ!
シュタっと屋上まで登った赤井は座り込む降谷を抱き上げると……
そのまま飛び降りた
「嘘だろおい!」
「大丈夫、劇場版だ」
見事着地した赤井はいつの間にかそこに停められていたマスタングの助手席に降谷を横たえる
「さあさっさと帰って治療しよう」
どこかウキウキとして運転席に回り込む赤井
そして、降谷は見た
誰かに見られているんじゃと見渡した視界の端で生暖かいうろんな目でこちらを見る小さな名探偵を……