小学部5年のとき、麻原は児童会選挙で会長に立候補した。落選すると、職員室に行って親しい教諭を教室に呼び出し、その面前で声を上げて泣いた。

「先生が落としたんだ。みんなに『票を入れるな』って言ったんだろう」

 驚いて、教諭は尋ねた。

「どうして、そんなごまかしをすると思うの? 智津夫君は、みんなに好かれていると思う?」
「うん」
「どうして?」
「僕は3カ月前も前から、『よろしく』って、みんなにお菓子を配ったから。寄宿舎で出るおやつをためて」

 教諭は「この子はとんでもない勘違いをしている」と感じた。すると麻原は泣き腫らした真っ赤な目で、

「僕には人徳がなか」
と漏らした。

しばらくたってから、配ったお菓子は、ほかの児童から奪ったものだったことがわかった。