「先生が落としたんだ。みんなに『票を入れるな』って言ったんだろう」
驚いて、教諭は尋ねた。
「どうして、そんなごまかしをすると思うの? 智津夫君は、みんなに好かれていると思う?」
「うん」
「どうして?」
「僕は3カ月前も前から、『よろしく』って、みんなにお菓子を配ったから。寄宿舎で出るおやつをためて」
教諭は「この子はとんでもない勘違いをしている」と感じた。すると麻原は泣き腫らした真っ赤な目で、
「僕には人徳がなか」
と漏らした。
しばらくたってから、配ったお菓子は、ほかの児童から奪ったものだったことがわかった。