SS モブ安5

「さて薬の効果は存分に確認いただけたと思いますが?」
果てたのち、さっきまでの痴態はどこへ行ったのかというほど冷静な顔をして服を着るとバーボンはさっさと商談を始めた。
対する男はまだ体力の限り搾り取られたダメージから、裸のままソファーにぐったり寄りかかっている。
「ああ……最高だったよ。しかもその様子じゃ副作用もなし。OKそちらのいい値で買おう」
そう言って小切手にサインをする。
バーボンは恭しくそれを受け取り目を走らせると、確かに、と胸ポケットにしまった。
ああくそ、良い腰だな。
散々ぶちまけたというのに男は性懲りもなくそう思う。
「なあ、また『試飲』させてもらえるのか?」
帰ろうとドアに手を掛けるバーボンに名残惜しくそう聞く男に、ゆっくり振り返ると人差し指を立ててニッコリと笑った。
「あなたがお利口にしていたらね」
そうしてドアは閉ざされた。

ベルモットとの待ち合わせ場所で小切手を渡し、簡単に仕事の報告をするとセーフハウスの一つに戻る。
玄関のドアを閉め、来ていた服を洗濯機に放り込み、裸になってシャワーを受け止める。
そして、浴室の鏡に映る自分を見た。
「あ……ああ……うわあああああああああああ!ああああああああ!」
絶叫が口から絶え間なく漏れる。
屈辱だった。
男を受け入れさせられたことも、それに快楽を感じたことも、自ら求めたことも。
クスリの効果だとはわかっていても、バーボンの、いや降谷のプライドはボロボロだった。
シャワーの湯が肌を伝う感触を、男の指に、男の舌に錯覚する。
がむしゃらにタオルで肌を擦る。
少し腰をかがめたその時、アナルからどろりとしたものが漏れ出すのを感じた。
それはローションだったのか、それとも男の精液だったのか。
絶望的な思いでそれを感じ、たまらずしゃがみこむ
じわりと涙が滲み、そのままとめどなく流れ落ちた。
「……ひぐっ…うぅ……うぁ、うううう……」
涙も、嗚咽も、どうせシャワーに紛れる。
消えない感触を纏ったまま、降谷は静かに泣き続けた……。