ポアロに行きたい赤井SSバレ

「ボウヤ、俺はポアロにハムサンドを食べに行ってくる」
昼下がりの工藤邸
穏やかな夏の午後、江戸川コナンがクーラーの効いた実家でホームズの中でもお気に入りの一篇『踊る人形』を読んでいるとき居候が言った
まるでちょっとタバコ買いに行ってくるとでもいうかのようにあまりにも自然に告げられたため江戸川少年は本から目を上げないまま
「行ってらっしゃい」と言いそうになり、居候が扉を出ようとしたところで慌てて引き留めた
「ちょ、赤井さん、なんだって!?」
「いや小腹が空いてな」
「それでなんでポアロ!?」
ポアロ、そうポアロと言ったのだこの男は
今心底不思議そうな顔で江戸川を見下ろすのは、死んだはずのFBI捜査官赤井秀一
そして彼が行こうとしているポアロというのは、米花町でもうまいサンドイッチを出すと評判の喫茶店だが、
彼に恨みを抱き、事情から休戦状態になっているものの未だ赦を持たぬ仇敵、公安警察降谷零の潜伏する場所なのだ
「あのさ、安室さんいるってわかってるでしょ!」
すると赤井はしたり顔で頷く
「もちろん。事前にポアロのPCをハッキングしシフトは手に入れている。確実に降谷くんのハムサンドが食べられる」
(ツッコミが追い付かねえ!)
江戸川少年は天を仰いだ
そもそも死亡偽装したのはなんのためだったのか、覚えているんだろうか赤井は
そんな江戸川の心労を推し量ることもなく赤井はそろそろ行ってもいいか?など聞いてくる
「なんでいきなりポアロに行こうなんて」
「いや前々から行きたかったんだ。だが降谷君が絶対に来るなと言うから遠慮していた。だがな……」
メキョ
赤井が握っていた車の鍵の鉄製のキーホルダーが歪んだ
「※※※がポアロに行き、降谷くんのハムサンドとコーヒーを振る舞われ、『早目にお店出た方がいいですよ♡』などと気遣われたと…!」
その時の赤井の人相はジンよりもヤバかった
後にE戸川少年はそう証言している
ともかく、と赤井は仕切り直した
「あまり遅くなるとハムサンドが売り切れになってしまう」
江戸川の心労を推し量ることもなく赤井は時計を気にしながら言った
江戸川はそれを聞き諦めた
「……せめてちゃんと沖矢さんになって」