うちは貧乏な家庭で、俺が生まれた時はカメラなんてなかった
だから写真の変わりに兄ちゃんが色鉛筆で俺の絵を描いて、アルバムにしてた
絵は上手じゃない
ただ、どうにかして形に残したかったらしい
ほぼ毎日、赤ん坊の俺を一生懸命描いてた
絵の隣に『キゲンがわるいのかな』とか『すやすやねむってます』ってコメント付きで
小学四年生の時、家に遊びに来た友達数人に、そのアルバムを発見された
めちゃくちゃ笑われて、貧乏を馬鹿にされた
その中の一人、友達の友達である帝統が笑いながらアルバム三冊をバラバラに破いてゴミ箱に捨てた
疲れた顔で帰って来た兄ちゃんがそれを見つけて、泣きだした
破かれた理由を言っても、変わらず泣き続けた
翌朝起きると、居間で兄ちゃんがゴミ箱から絵の破片を集めてセロハンテープでとめてた
「恥ずかしい思いさせてごめん。でもこれ、俺の宝物なんだ」
申し訳なさそうに優しくそう言われると、涙が溢れた