新一
目の前で刺され血を流す大切な人
必死で傷口を抑えても溢れてくる血は止まらない
なんでこんなことするんだ、なんで***が殺されなきゃならないんだ
なんで、なんでと考えてもいつも働く灰色の脳細胞は沈黙して働きやしない
ちがう、何でこんなことを、なんてどうだっていいんだ
***を殺した奴がいる、***は死んでしまうのにあいつはのうのうと生きている
そんなこと許せない、許されていいはずがない
冷たくなった***の腹に刺さった刃物を抜く
それを、衝動のままあいつの背中に振り下ろした
『殺人者のキモチを知ったら、もう、探偵には戻れない』
平次
目の前で、泣きながら刃物を振り下ろす***
ゆっくりと振り返った顔には笑みと涙とべったりと返り血が
衝動的に抱きしめた
殺人犯が目の前にいるのに、許せないのは自分自身だ
ここに至る前に、どうして止められなかったのか
だがいまするべきことは一つ
この死体を隠さなければ
『一緒に地獄に落ちよう。君といる悪夢』
快斗
いとしい人の変わっていく姿を変わらないまま見つめていた
少しづつ深くなる皺、垂れる瞼、白い物が混じり始める髪
全てがいとおしいままなのに変わらない自分
どんどん、取り残されていく
最後の吐息をキスで引き取って、一人
『君のいない世界で生きる』
赤井
***?Who is he?
誰に聞いても君を知る人がいない
君のいた痕跡がない
死んだのではない、最初からいなかった
俺の気が狂ったのか?存在しない君をこんなにも愛してる
『君だけが居ない平和な世の中』
安室
真っ白い空間に一人
建物はなく、空も大地もなく、人もおらず、音もない
砂粒の一つもない
守るべきものも何もない、討つべき悪もどこにもない
目指すべき平穏がこれか?
ゆっくりと記憶も白に蝕まれる
守りたかったもの、大切な人たち、人を愛した記憶
全部消えていく
『そしてゼロになる』