髭姫のハーブよ
極が来るまで使われていたわ

ほんとはこれ
主へ
……強くなりたいと思った。
修行の理由なんてのはそれだけで十分だろう。誰よりも強くなれば、俺は山姥切の写しとしての評価じゃなく、俺としての評価で独り立ちできる。
だというのに。人々が話す内容が、俺の記憶と違うのは、どういうことだ?

……すまんな。この間は動転して、要領を得ない手紙だった。
正直なところ、俺もまだ混乱しているんだ。俺は、山姥を斬った伝説を持つ刀、山姥切の写しであって、山姥を斬ったのは俺じゃないと記憶している。
だが、俺が会った人々は、俺が山姥を斬ったから、そのもとになった長義の刀が山姥切と呼ばれるようになったという。
これでは、話が全く逆だ。
写しの俺が、本科の存在感を食ってしまったようなものだ。どう、受け止めていいかわからない。

前の手紙のあと、長い年月、多くの人々の話を聞いて、わかったことがある。
俺が山姥を斬ったという伝説、本科が山姥を斬ったという伝説、そのどちらも存在しているんだ。
案外、どちらも山姥を斬ったりなんかしていないのかもな。ははは。人間の語る伝説というものは、そのくらい曖昧なものだ。
写しがどうの、山姥斬りの伝説がどうので悩んでいたのが、馬鹿馬鹿しくなった。
俺は堀川国広が打った傑作で、今はあんたに見出されてここにいる。本当に大事なことなんて、それくらいなんだな。

写しがどうとか、考えるのはもうやめた。俺はあんたの刀だ。それだけで十分だったんだ
迷いは晴れた。俺は本丸に帰る。