>>105
そうだった。私は「自カプちゃんがいる世界」を望んだのであってそれがABなのかBAなのかは指定していなかったのだ。
まさか転生してまで逆カプ者に出くわすなんて…
「どうしたの?」
「来ないで!」
私は呆気にとられたくんすこ婆を置いて走り出した。
もう何度も見てきた世界だから道順は頭に入っている。
そこの角を越えると―――
「―――あった」
そこには寂れた神社があった。
こういった神社には神様がいなくなり代わりによくないものが憑いているのだ。
そう、呪いをかけるにはうってつけの場所。
「ふふ…ふふふふふふ…あー楽しい…」
神社に足を踏み入れようとした時―――
「待ちな」
聞きなれない声。
振り返るとそこには一人の男が立っていた。
また知らないキャラ。ということは…
「またわいわい婆…」
「あら婆以外のわいわい婆にも会ったのね。」
男が近づいてくる。
「来ないで!」
「落ち着きなさいよ。こんなところで呪いなんてかけたら呪い返しがくるわよ。」
「あんたには関係…」
ぐぅ〜〜っ
緊張感を断ち切るように間抜けな腹の音がした。
そういえば今日はまだ何も食べていない。思わず赤面する。
「あっはっはっ。腹が空いてりゃ戦は出来ないってね。これ食べなよ。」
男が懐からタッパーを取りだし投げつけてきた。
「これは…」
「婆特製馬肉の燻製よ」
「燻製婆…」
なんだかすっかり気が抜けてしまい素直にいただくことにした。
「そういえばあんたそんな格好でいいの?」
燻製婆に指摘されハッとする。くんしこ婆から逃げてしまったためまだジャージのままなのだ。
「そうよ!こんな格好じゃ笑われちゃうわ!服を調達しないと!」
「その必要はないわ。なりたい姿を強くイメージすればいいのよ。こんな風に…」
ポンっと可愛らしい音がしたと思うと燻製婆は騎士風の出で立ちになった。
「服装だけじゃなく見た目も性別も能力も好きに変えられるのよ。あなたも好きなキャラになるといいわ。」
「くんすこ婆のあの奇妙な出で立ちは本人のセンスだったのね」
私がなりたいキャラ…性別は女のままでいい。顔は可愛い系で服装は巫女風で…そうだ五寸釘を武器に戦うの!
そうイメージするとポンっと音がして私の姿が変わった。
「それがあんたのイメージするキャラなのね。―――これでフェアになったわね」
燻製婆が剣を握り直す。
「フェア?」
「婆のカプを教えなさい。返答によっては婆を燻すことになるわ」
「まさか…さっきの馬肉は…」