>>121
私が言葉もなく攻めを見つめていると、攻めは二度、三度と拳を地面へ打ち付けてから、ぴたと動きを止めた。

「赤の他人にこんなことを話すなんてな。はは、今日の俺はどうかしている。なあに、あいつのことはとっくに吹っ切った。……だからもういいのさ」

自嘲を口の端ににじませ攻めが立ち上がる。攻めの乱れた前髪の奥にひそむ瞳は、けれど、言葉とは裏腹に陰鬱な光を宿していた。

──攻めが受けを諦められるわけがないんだわ。

わかりきったことだった。攻めと受けが愛し合うのはこの世界の摂理なのだから。
二人を引き裂く存在など、この世界に在ってはいけない。激しい怒りが胸の内に湧き上がる。受けと攻めに幸せになって欲しい。今の私にはそれしか考えられなかった。
そして、まるで天啓を受けるがごとく、私の脳裏にある妙案が閃いた。それは……