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攻めが私へ買い与えた靴はやわらかい本革製で、とても履き心地がよかった。ついでとばかりに服も一揃い与えられたので、ジャージに裸足から一転して随分まともな格好になった。

そして今、私は攻めの住むマンションの一室で、ソファに腰を下ろしている。そう、攻めと受けの愛の巣に足を踏み入れたのだ!
神聖な場を、私のような婆の薄汚い呼吸で汚してはいけない。途端にしおらしくなった私を、攻めが胡散臭げに一瞥する。

「先ほどお前は婚約者を殺すなどと豪語していたが、本気か?」
「もちろんよ。そのためにまずは敵の情報が知りたいわ」
「情報ねえ。何が知りたい?」
「何もかもを」

私の本気を見定めるように、攻めがその切れ長の目を細める。視線が絡みあったのは、ほんのつかの間だった。

「……情報などいくらでもくれてやる。お前が本当にあいつを亡き者にしてくれるならな」

言うなり、攻めは婚約者の情報をそらんじた。年齢、職業、現住所はもちろん、生育歴や家族編成などその情報は多岐に渡る。
何も見ずにこれほど答えられるなど……いったい攻めは幾度、婚約者へ殺意を抱き、またそれを押し殺したのだろうか。
攻め×受けの尊さを改めて噛み締めつつ、私は口を開いた。

「情報は出揃ったわね。さあ、殺しに行きましょう」